及第粥

及第粥（カプタイチョッ）

及第粥は、中国広東省の代表的な粥料理の一つです。「カプタイチョッ」という名称でも知られ、なめらかに炊き上げられた白米の粥に、様々な豚の内臓（モツ）をたっぷりと加えて作られるのが特徴です。具体的には、滋養に富む豚のレバーをはじめ、ハツ（心臓）、ガツ（胃袋）などが一般的に用いられます。仕上げには、香ばしい刻み落花生やカリカリとした揚げパン（油条）の細切れが散らされ、さらに溶き卵が加えられることもあります。

豚の内臓は栄養価が高いことでも知られており、この粥は単なる軽食としてだけでなく、栄養補給の面からも優れた料理と言えます。広州市、特に西関地区では、古くから定番の朝食メニューとして親しまれており、地元の人々の食卓に深く根付いています。その美味しさと栄養バランスから、庶民の間でも広く愛されている料理です。

「状元及第粥」という別名

この粥は、「状元及第粥（じょうげんきゅうだいしゅく）」という別名でも広く知られています。この名称は、中国の歴史において重要な制度であった科挙（598年～1905年）との関連に由来します。科挙は官僚登用試験であり、その最高位の合格者は「状元（じょうげん）」と呼ばれ、大変な栄誉とされました。「及第」は試験に合格することを意味します。

古くから、この粥を食べると科挙に合格できる、特に状元になれるという言い伝えが生まれたことから、合格祈願の験担ぎとして広く信じられるようになりました。この伝承が、「及第粥」という名が定着する一因となり、多くの受験生やその家族に希望を与える存在となりました。

料理名の由来にまつわる物語

及第粥という独特な名前がどのように生まれたかについては、いくつかの説が伝えられています。特に有名な二つの説をご紹介します。

明代の倫文叙（りん ぶんじょ）にまつわる説

明の時代、倫文叙という人物は幼い頃、非常に貧しい家庭に育ち、野菜だけで飢えをしのぐような生活を送っていました。彼の才能を見かねた隣人が、粥を作るための米を分け与え、倫文叙はそれを野菜と共に炊いて食べていました。ある時、野菜が尽きてしまった際に、隣人はミートボールや豚のレバーを加えて粥を作り、昼食として彼に振る舞ったといいます。

後に倫文叙が見事、科挙に合格して栄達した後、故郷を訪ねました。そこで彼は、かつての貧しい日々を支えてくれた隣人（既に老人となっていた）に感謝の気持ちを込めて、あの時振る舞われたミートボールと豚レバー入りの粥を作って贈りました。この粥を人々が「及第粥」と呼ぶようになり、広州市ではこの説が特に広く信じられています。

清代の林召棠（りん しょうとう）にまつわる説

清の時代、1823年の科挙で状元となった広東出身の林召棠は、ミートボール、豚のレバー、豚の小腸などを具材にした粥が大好物でした。人々は、状元が大好物としていたこの粥を食べれば、自分たちにも良いことが起こる、あるいは合格できるといった縁起担ぎの気持ちから、この粥を「及第粥」と呼ぶようになったといいます。

この説では、粥に使われる特定の具材が科挙の成績上位三位を象徴していると解釈されることがあります。例えば、丸い肉団子は状元（首席）を、豚の肝臓（レバー。元々は牛の脾臓を指し、広州では「牛膀」とも呼ばれる）は榜眼（ぼうがん、二位）を、そして美しく花形に切られた豚の小腸は探花（たんか、三位）を象徴しているとされるのです。これにより、状元、榜眼、探花という「三元」を揃える縁起の良い粥として、「三元及第粥」とも呼ばれるようになりました。

さらに、この三元の具材に加えて、豚の腎臓、心臓、舌、あるいは魚などの他の食材を加えると、「七及第粥」と呼ばれることもあり、これは更なる吉兆を表すとされています。

その他

及第粥は、香港、マカオ、そして広東省の都市部で一般的な、茶餐廳（チャーチャンテン）と呼ばれる喫茶・軽食店でもよく提供されています。比較的短時間で提供できるファーストフード的な側面も持つため、多くの人々に気軽に楽しまれています。

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