台北城

台北城：清朝時代の台湾における政治・文化の中心地

台北城は、清朝時代に台湾の台北に築かれた城郭で、その面積は約1.4平方キロメートルに及びます。この城は、台北府の所在地であったことから「台北府城」とも呼ばれ、当時の政治・文化の中心地として重要な役割を果たしました。しかし、その歴史は短く、完成からわずか20年後には大部分が取り壊され、現在ではその一部が史跡として残るのみとなっています。

歴史

築城の背景

18世紀中頃から、中国大陸の泉州から多くの移民が台湾に移住し、淡水河畔の艋舺地区に定住しました。その後、平埔族との通婚などにより人口が増大し、艋舺は「一府二鹿三艋舺」と称されるほどの繁栄を築きます。しかし、1853年に発生した地域闘争に敗れた泉州同安の人々は、大稲埕に移住し商業に従事するようになります。これ以降、艋舺と大稲埕が台北の中心地として栄えるようになりました。

1871年、清朝は台湾出兵によって琉球に対する宗主権を失ったことを契機に、日本の勢力が台湾に及ぶことに危機感を抱きます。そして、台湾を中国防衛の前線と位置づけ、1875年には台北府城が正式に成立することになりました。

建設の過程

台北府の設置が決定すると、防衛上の必要性から、1878年に未開の荒地が選定され、台北府城官署、宗廟などの建築が構想されました。1879年には台北が正式に開府し、初代知府の陳星聚と福建巡撫岑毓英は積極的に台北城建設に取り組み、1882年に着工されました。1884年には、陳星聚知府と台湾道劉璈の協力により、清朝最後の風水石城である台北城が完成しました。

台北城完成後、城内には文廟、武廟、聖王廟、城隍廟、天后宮などの宗教施設が建設されました。また、淡水庁、台北府、布政使、台湾巡撫などの官衙も建設され、台北は政治・宗教の中心地としての地位を確立しました。

日本軍の入城

1884年に勃発した清仏戦争では、基隆方面からフランス軍が台北に迫りましたが、この時は台北城に戦火が及ぶことはありませんでした。しかし、1895年の日清戦争では、台北城は戦火に巻き込まれました。日本軍は平和進駐し、その際、台北の商人である辜顕栄が重要な役割を果たしました。

辜顕栄は、混乱した台北の状況を収拾するため、日本軍に平和進駐を要請し、その結果、日本軍は無事に台北に入城することができました。

城壁の撤去

日本軍の進駐後、台北城の防衛に対する城壁の必要性が議論され、1897年に城壁の撤去が決定しました。1900年には、台湾初の都市計画の中で、城壁の撤去と堀の埋め立てが始まり、新たな道路の建設が計画されました。そして、1904年末までに、北門、東門、南門、小南門以外の城壁がほぼ全て取り壊されました。

城壁の石材は、台北監獄と兵営の建設に再利用され、城壁跡は大通りとして整備されました。

台北城の特徴

台北城は、風水に基づいて建設されたとされており、その立地は伝統的な考え方を反映しています。北東から南西にかけて緩やかに傾斜し、北には大屯山と七星山を配置、城の中心線は北極星を向いていました。

規模と特徴

台北城は、台湾で唯一の石城であり、長方形の形状をしているのが特徴です。

城高：約5m
城寬：約4m
南北：約1.3km
東西：約1km
面積：約1.4km2

城壁の石材は、内湖の金面山で産出された安山岩が主に使用され、基礎には軟弱な地盤対策として、一尺から三尺の石材が敷き詰められています。

城門

台北城には、北門（承恩門）、南門（麗正門）、小南門（重熙門）、東門（景福門）、西門（宝成門）の5つの城門がありました。

北門：台北城の表玄関であり、清朝の皇帝の恩顧を得る意味を込めて「承恩門」と名付けられました。碉堡様式という珍しい建築様式で、現在もほぼ完全な姿で残っています。
西門：最も華麗な姿であったことから「宝成門」と名付けられましたが、1900年の市区改正に伴い取り壊されました。
南門：台北城最大の城門であり、その南側に小南門が設けられていました。
東門：有事に際しての封鎖が可能な構造でした。

南門、東門、小南門は福建様式で建築されていましたが、1965年に北方様式に改築されています。

その後

1993年、台北捷運工事中に、台北城の基石が多数発掘され、現在では、その一部が展示されています。また、2004年には、築城120年をテーマとしたイベントが開催されました。

台北城の城壁があった場所は、現在、中山南路（東城壁）、愛国西路（南城壁）、中華路（西城壁）、忠孝西路（北城壁）として、台北市内の重要な交通動線となっています。

関連項目

台北府城東門
台北府城西門
台北府城南門
台北府城小南門
台北府城北門
* 台北監獄囲牆遺跡

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