台湾の政治史

台湾の政治史は、17世紀にオランダが台湾を占拠したことに始まり、鄭氏政権、清朝統治時代、日本統治時代を経て、現在の中華民国統治時代へと続いています。この記事では、台湾における政治の変遷を詳細に解説します。

政府沿革

台湾における最初の政府機構は、元王朝と明王朝が澎湖諸島に設置した澎湖寨巡検司ですが、これは澎湖地区のみを管轄していました。17世紀中期には、オランダが台湾を統治し、北部にはスペイン政庁、南部にはオランダ政庁が置かれました。

1662年から1683年までの間、鄭成功が台湾に亡命政権を樹立し、その後清朝による統治が始まりました。清朝は台湾を福建省管轄の台湾道として扱い、後に台湾省を設置しました。1895年、下関条約により台湾は大日本帝国に割譲され、台湾総督府による統治を受けることとなりました。

1945年に日本が敗戦すると、中華民国が台湾を統治することになりました。当初は台湾省行政長官公署が設置されましたが、国共内戦の激化に伴い台湾省政府が設置されました。1949年には、国共内戦に敗れた中華民国政府が台湾に移転し、現在に至っています。

台湾の統治者

オランダ統治時代（1624年 - 1662年）

台湾長官

台湾長官は、オランダ東インド会社によって任命された台湾の行政長官です。1624年から1662年まで12人が着任し、全島の行政を管轄しました。オランダ東インド会社は、当初は澎湖を拠点としましたが、後に台湾を貿易拠点とし、熱蘭遮城を台湾行政の中心としました。

鶏籠淡水長官

鶏籠淡水長官は、スペインが台湾北部に設置した官職です。1626年から1642年まで8人が就任し、鶏籠（現在の基隆市）と淡水に駐留しました。スペインの勢力範囲は基隆・淡水地域に限定されていました。

鄭氏政権（1662年 - 1683年）

延平郡王

延平郡王は、明朝永暦帝が鄭成功に与えた封号で、台湾では一般的に鄭成功を指します。鄭成功は台湾に独自の政権を打ち立て、台湾の開発を促進する基礎を築きました。

承天府 府尹

承天府府尹は、鄭氏政権が設置した台湾地区の統治機関の長官です。当時、鄭氏政権は福建にも支配地を有しており、台湾地区の行政は承天府が担当しました。

東寧総制

東寧総制は、鄭氏政権初期に台湾を管轄した官職です。1674年に正式に設置され、陳永華が任命されました。鄭経が中国に西征する期間中の台湾の留守を任されましたが、鄭経が台湾に戻ると廃止されました。

清朝統治時代（1683年 - 1895年）

台湾道

台湾道は、清朝が設置した特殊行政区画および官職です。福建省の管轄下に置かれ、道員は台湾の軍政指導者でもありました。台湾道は台湾府を管轄し、その道署は当初廈門に置かれましたが、後に台南に移されました。

台湾知府

台湾知府は、台湾府の主官であり、台湾道、福建台湾布政使、福建台湾巡撫等の監督下にありました。1895年の日本割譲に伴い、台湾府は廃止されました。

台湾 巡撫

台湾巡撫は、1885年に設置され、福建台湾省の最高統治官となりました。台湾の軍政を監督し、当時の台湾は巡撫の管轄下に置かれました。

台湾民主国（1895年5月 - 10月）

日清戦争後、下関条約により台湾が日本に割譲されることに反発した勢力によって、短期間成立した国です。唐景崧が初代総統に就任しましたが、すぐに清朝に逃亡し、日本軍によって鎮圧されました。

日本統治時代（1895年 - 1945年）

台湾総督

台湾総督は、日本統治時代の統治機構である台湾総督府の長官です。1895年から1945年まで19人の総督が任命され、行政、軍事、立法権を掌握しました。初期は武官総督が中心でしたが、後に文官総督が任命されるようになり、盧溝橋事件後は再び武官総督が任用されました。

中華民国統治時代（1945年 - 現在）

台湾 省行政長官、省主席、行政院長

台湾省行政長官は、1945年から1947年の間、台湾省の統治責任者として設置されました。その後、台湾省政府主席が設置され、台湾の最高統治者となりました。1949年の中華民国政府の台湾移転後は、行政院長が実質的な最高行政官となりました。

中華民国総統

1950年以降、中華民国総統が台湾の最高統治者となりました。総統は国家元首として、行政の最高責任者、三軍の統帥、国家代表としての職務を担います。国際社会では「台湾総統」と呼ばれることもあります。

台湾行政区画の沿革

鄭氏政権時代

鄭成功は台湾に一府二県を設置しました。後に鄭経は承天府及び東都を廃止し、天興県と万年県を州に改編しました。

清朝統治時代

清朝は台湾に一府三県を設置し、台廈道を設置して台湾と廈門を共同管轄しました。後に台廈道を台湾道と改称し、台湾府の下に一府四県一庁を設置しました。1887年には台湾が省として独立し、三府が設置されました。

日本統治時代

1895年から1945年までの間、台湾は日本によって統治されました。行政区画は日本の制度に準じて整備されました。

中華民国統治時代

中華民国政府は、台湾省行政長官公署を設置し、その後台湾省政府に改組しました。台北市や高雄市は院轄市（現在の直轄市）に昇格し、行政区画は変更を重ねて現在に至っています。

台湾の選挙史

台湾の選挙制度は、日本統治時代の州、市、街、庄の議員選挙に遡ります。当初は制限選挙でしたが、1945年以降は普通選挙が実施されるようになりました。民主化以前は、地方選挙のみ実施され、国会や台湾省長選挙は行われませんでしたが、1996年に総統直接選挙が初めて実施されました。1998年には台湾省が形式化され、省議会は廃止されました。

台湾の政党

台湾の政党は日本統治時代に誕生しましたが、本格的な活動は戒厳令解除後から始まりました。現在は、中国国民党と民主進歩党の二大政党を中心に、多くの政党が活動しています。

参考文献

劉寧顔編『重修台湾省通志』（台湾省文献委員会台北 1994年）
戴天昭『台湾国際政治史』
史明『台湾人四百年史』（蓬島文化公司 1980年）
王育徳『台湾　苦悶的歴史』（台湾青年社 1979年）
周明峰『台湾簡史。台北：前衛 1994年）
施亜軒『台湾的行政区変遷』（遠足文化出版社台北 2003年）

外部リンク

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