司馬駿

司馬駿：西晋を支えた皇族・武将

司馬駿（しば しゅん、拼音: Sīmǎ jùn）は、中国三国時代の魏から西晋にかけて活躍した武将であり、西晋の皇族です。司馬懿の七男として生まれ、その聡明さと優れた統率力で西晋の安定に大きく貢献しました。

生涯

司馬駿は幼少の頃から聡明で、5、6歳にして既に文章を理解し、経典を読みこなすことができました。魏の時代には幼くして散騎常侍侍講に任じられ、その後も歩兵校尉や屯騎校尉を歴任しました。

265年に西晋が成立すると、汝陰王に封じられ、都督豫州諸軍事として許昌を鎮守しました。268年には、呉の武将である丁奉らの侵攻を防ぎ、その武勇を示しました。その後、鎮西大将軍に昇進し、関中（現在の陝西省一帯）の鎮守を任されます。

関中では、異民族の反乱鎮圧に尽力し、特に禿髪樹機能の反乱鎮圧では、巧みな戦略と人心掌握術によって異民族を懐柔し、多くの民衆を帰順させました。また、農業を奨励し、兵士や民衆と苦楽を共にすることで、民からの信頼を勝ち得ました。

司馬駿は、親孝行でも知られており、母への愛情は深く、その病を心配するあまり食事も喉を通らないほどでした。また、学問を好み、多くの著作を残しました。その優れた人柄と才能から、西晋の宗室の中でも最も将来を嘱望された人物の一人でした。

282年には、武帝が皇弟である司馬攸を封国に追い出そうとした際に、武帝を諫めたものの聞き入れられず、そのことを深く憂慮し、病に倒れたと伝えられています。

286年に54歳で亡くなると、その死を悼み、多くの民衆が司馬駿のために碑を建てました。その碑を見ると、誰もが敬意を払い、拝礼したと言われています。司馬駿が遺した仁徳は、人々の心に深く刻まれました。

逸話

司馬駿の人物像を伝える逸話は数多く存在します。

孫鑠との交流: 身分の低い孫鑠が、石苞の謀反の疑いをかけられた際、司馬駿は孫鑠に助言を与え、石苞を救いました。また、孫鑠の才能を高く評価し、彼を重用しました。
劉寶の救済: 罪を犯した劉寶を、自らの財産で身代わりにした後、彼を従事中郎に任命しました。このことは、当時の美談として語り継がれています。
孫楚の登用: 傲慢な性格で周囲と不和を起こしがちだった孫楚を、その才能を惜しみ、自らの参軍として迎えました。

これらの逸話から、司馬駿が身分や過去にとらわれず、才能ある人物を積極的に登用する度量の大きさと、人情に厚い人物であったことが伺えます。

評価

司馬駿は、西晋の皇族として、武将として、そして政治家として、多岐にわたる分野で優れた才能を発揮しました。その功績は、西晋の安定と発展に大きく貢献しました。

司馬駿は、司馬懿の息子たちの中でも特に優れた人物として評価されています。司馬懿譲りの軍才に加え、その人柄は父親よりも優れていたと言われています。しかし、その功績に比べて大衆的な知名度は低いのが現状です。

三国志演義にも名前が登場しないことからもわかるように、歴史の表舞台で大きく取り上げられることはありませんでした。しかし、司馬駿が西晋の安定に果たした役割は決して小さくありません。司馬駿は、西晋を支えた影の功労者として、もっと評価されるべき人物と言えるでしょう。

子孫

司馬駿には10人の息子がおり、中でも順陽王の司馬暢と新野王の司馬歆が特に有名でした。しかし、永嘉の乱によって、その子孫は殺されるか、あるいは行方不明になったと伝えられています。

参考文献

『晉書』《卷三十八 列傳第八·扶風武王駿傳》
『晉書』《卷三 帝紀第三》
『晉書』《卷三十三 列傳第三》
『晉書』《卷五十六 列傳第二》
『晉書』《卷 九十七 北狄》
『太平御覧』《卷二百二十四·晉諸公贊》
『太平御覧』《卷二百四十八·晉諸公贊》
『三国志全人名事典』
『東西晉演義』《第十回》
『世説新語』《德行 二十二》
『資治通鑑』

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