永嘉の乱

永嘉の乱

永嘉の乱は、西晋末期に発生した異民族による大規模な反乱であり、西晋の滅亡を決定づけた動乱です。304年から316年にかけて発生し、中国の歴史を大きく変える転換点となりました。この乱は、単なる地方の反乱ではなく、西晋王朝の根幹を揺るがすものであり、その後の中国史に深い影響を与えました。

永嘉の乱の前段階

異民族の流入と西晋の混乱

後漢時代から、匈奴をはじめとする異民族が中国内地に移住を始めていました。西晋時代になると、これらの異民族は漢人に使役されながら農耕に従事する者もいましたが、その一方で、氐族や羌族といった新たな異民族も涼州方面に移住してきていました。西晋の重臣たちは、これらの異民族の存在を危険視し、彼らを内地から排除するように進言しましたが、時の皇帝たちはこの提案を受け入れませんでした。

八王の乱

西晋内部では、武帝の死後、恵帝が即位したものの、その暗愚さから政治は混乱しました。外戚である楊駿が権力を掌握し、専横を極めましたが、皇后の賈南風がこれに対抗し、楊駿一族を排除します。しかし、その後、賈南風自身も専横を極め、皇太子を殺害するなど、国内の混乱はさらに深刻化しました。そして、その混乱に乗じて、趙王司馬倫が皇帝の位を簒奪しますが、他の皇族たちの反発を招き、内乱が続きました。この内乱は、最終的に東海王司馬越によって終息しますが、西晋の国力は著しく低下しました。

異民族の反乱

各地での反乱

八王の乱によって中央政府の力が弱まると、各地で飢饉が相次ぎ、流民が増加しました。特に問題となったのが、以前から反乱を起こしていた氐族や羌族です。また、匈奴の酋長である劉淵は、八王の乱の混乱に乗じて勢力を拡大し、304年に漢（後の前趙）を建国しました。さらに、益州では李雄が独立し、成漢を建国しました。これらの反乱は、西晋の支配を大きく揺るがすことになりました。

劉淵の台頭

劉淵は、匈奴の部族をまとめ上げ、独自の勢力を築き上げました。彼は漢王を称し、平陽を都として、華北各地を席巻しました。劉淵の勢力は、西晋の中枢を脅かすほどに成長し、西晋の衰退を決定的なものとしました。

洛陽陥落

西晋の衰退

八王の乱によって、西晋は内部分裂を深め、統治能力を失いました。司馬越が政権を握るものの、独裁を強めたため、人心は離れていきました。そして、司馬越の死後、西晋軍は石勒によって大敗を喫し、洛陽は漢軍によって陥落しました。洛陽では、皇族や貴族、市民が多数殺害され、西晋は事実上滅亡しました。

懐帝の処刑

洛陽陥落後、懐帝は漢に連行されましたが、その後、処刑されてしまいます。これにより、西晋の正統性は失われ、西晋の再興は不可能になりました。

長安陥落と乱の終焉

愍帝の即位と長安陥落

懐帝の死後、長安で愍帝が即位しましたが、その勢力はごくわずかでした。長安もまた漢軍によって陥落し、愍帝は降伏を余儀なくされました。これにより、西晋は完全に滅亡しました。

西晋の終焉

西晋の皇統は、ここに完全に断絶しました。永嘉の乱は、西晋の崩壊をもたらし、中国は五胡十六国時代という新たな歴史段階へと進むことになったのです。

結果・影響

五胡十六国時代の幕開け

永嘉の乱をきっかけに、華北では異民族による王朝が次々と建国され、五胡十六国時代が始まりました。この時代は、異民族と漢人が入り乱れて覇権を争い、激動の時代となりました。

東晋の成立

一方、華南では、西晋の皇族である司馬睿によって東晋が建国されました。東晋は、南朝へとつながる歴史を歩み始めました。永嘉の乱は、中国の南北分裂を決定づける出来事となりました。

永嘉の乱の発生年と終結年

永嘉の乱の発生年は、一般的に劉淵が漢を建国した304年とされています。終結年については、311年の洛陽陥落、313年の懐帝処刑、316年の長安陥落など諸説がありますが、いずれにしても316年の長安陥落をもって西晋は完全に滅亡したと考えられています。


永嘉の乱は、西晋の内部矛盾と異民族の侵入が複合的に絡み合って発生した動乱であり、その後の中国史に大きな影響を与えた重要な出来事です。この乱は、中国の歴史における大きな転換点であり、その影響は後世にまで及んでいます。

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