吉弘鎮信

吉弘鎮信：大友家を支えた勇将

吉弘鎮信（よしひろ しげのぶ）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将であり、大友氏の家臣として活躍しました。父は同じく大友氏の重臣であった吉弘鑑理で、弟には高橋紹運がいます。大友氏の当主・大友義鎮（宗麟）から偏諱を受け、鎮信と名乗りました。

若き日の活躍

鎮信は、父・鑑理と同様に大友氏に仕え、武将としての才能を早くから開花させました。永禄4年（1561年）には、主君・義鎮の命により、15,000の兵を率いて豊前門司城の奪還作戦に参加しました。この戦いでは、毛利氏の援軍や村上水軍の抵抗に遭い、また、毛利方の武将・乃美宗勝が一騎打ちで大友方の武将を討ち取ったことで戦況は不利となり、鎮信は門司城の奪還を断念し、軍を退却させました。

毛利氏との激戦

永禄12年（1569年）、毛利氏の勢力が拡大し、大友氏は苦境に立たされます。鎮信は、この状況を打開するために、大友軍を率いて毛利軍と激戦を繰り広げました。特に、立花山城の戦いでは、鎮信は2,000～3,000の兵を率いて毛利軍の背後を突き、兵站線を叩きました。この戦いで、毛利軍は3,500人もの死者を出す大損害を受け、鎮信の部隊は特に目覚ましい活躍を見せました。鎮信直属の部隊だけで毛利兵百数十人を討ち取ったとされ、その功績は宗麟から賞賛されました。毛利軍の殿を務めたのが猛将・吉川元春であったことからも、鎮信の武勇がいかに優れていたかがうかがえます。

立花城督と宗麟の側近

元亀2年（1571年）、父・鑑理の死去により家督を継いだ鎮信は、筑前国立花城督に任じられ、博多や堺の商人との交渉などで活躍しました。ただし、これは大友家の城督としての役割であり、吉弘氏の本拠は豊後本国の屋山城や筧城にありました。その後、大友宗麟は立花道雪を立花城督から遠ざけ、代わりに鎮信を呼び戻して側近としました。鎮信は宗麟の側近として、奉行としても活躍し、多々良浜の戦いや九州における毛利氏との戦いでも数々の武功を挙げました。

耳川の戦いと壮絶な戦死

天正6年（1578年）、薩摩の島津氏との耳川の戦いに従軍した鎮信は、大友軍の一翼を担い戦いました。しかし、総大将の田原紹忍が実戦経験に乏しく、軍議での方針もまとまらないなど、大友軍は統制が取れていませんでした。鎮信は斉藤鎮実と共に宗麟に前線への出陣を促しましたが、宗麟は田原紹忍の判断に従うように指示しました。これにより、大友軍の士気は低下しました。

軍議では角隈石宗と共に、様子を見ながら進退を決めるという慎重な立場を取った鎮信でしたが、田北鎮周が軍令を無視して勝手に攻撃を開始したため、なし崩し的に戦闘に巻き込まれました。当初、大友軍は優勢に進めましたが、統制が取れていなかったため、深追いするものが後を絶ちませんでした。そこへ島津軍の伏兵が横腹から鉄砲を浴びせたため、大友軍は総崩れとなりました。鎮信は部隊を率いて奮戦するも、戦局を覆すことはできず、この戦いで壮絶な戦死を遂げました。その死は、大友氏にとって大きな痛手となりました。

子孫と系譜

鎮信の家督は子の吉弘統幸が継ぎました。また、鎮信は複数の妻妾を持ち、多くの子女をもうけました。

父：吉弘鑑理（1519?-1571）
母：貞善院義誉静音 - 大友義鑑娘
室：玉流院妙泉 - 臼杵鑑速娘
男子：吉弘統幸（1563-1600）
男子：吉弘統貞 - 臼杵鎮定の養子
側室：林ジュリア - 大友義鎮（宗麟）の継室奈多夫人の女中頭、のち宗麟の継室
女子：林クインタ - 大友宗麟の養女、林宗頓（志賀親成、洗礼名はゴンサロ）室
女子：大友親家室
生母不明の子女
男子：田北鎮生（統員）
女子：戸次統常室
女子：橋津（松山）伊兵衛室

吉弘鎮信を主人公とする関連作品

* 赤神諒『大友落月記』（日本経済新聞出版社、2018年9月11日）ISBN 978-4532171476

吉弘鎮信は、その武勇と忠誠心で大友氏を支えた名将でした。彼の生涯は、戦国時代の武将の生き様を今に伝える貴重な歴史の一ページと言えるでしょう。

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