吉敷毛利家

吉敷毛利家：毛利家の庶流から華族へ至る歴史

吉敷毛利家は、安土桃山時代から明治時代にかけて存在した毛利家の分家にあたる家系です。毛利元就の三男、小早川隆景とその養子にして元就の九男にあたる小早川秀包を祖とし、その系譜は長く、華麗な歴史を刻んできました。江戸時代には長州藩の一門家老として重要な役割を担い、維新後には士族を経て華族の男爵家となりました。

隆景・秀包から始まる家系

小早川隆景には実子がなく、弟である小早川秀包を養子として迎えました。しかし、豊臣秀吉の介入により秀包は廃嫡され、このことが吉敷毛利家の始まりとなりました。秀包はその後も秀吉から厚遇を受け、各地で活躍し、筑後久留米城主として13万石を領するまでに至ります。関ヶ原の戦い後、改易されたものの、その子孫は毛利輝元に召しだされ、長門国内に7000石を与えられました。

吉敷への移転と長州藩での活躍

秀包の子・元鎮の子、元包は寛永2年（1625年）に周防国吉敷郡吉敷村（現在の山口県山口市吉敷地内）に移封され、1万1000石に加増されました。この地を拠点として以後、吉敷毛利家と呼ばれるようになりました。長州藩においては一門家老第四席として藩政に大きく貢献しました。元禄時代には、越前松平家による毛利家への介入を阻止するため、毛利就直が奔走し、毛利家の血統を守り抜いたという逸話も残されています。

文化・教育への貢献と幕末の動乱

吉敷毛利家は、文化2年（1805年）には領内に郷校「憲章館」を設立するなど、文化・教育面にも貢献しました。幕末には、家臣の服部哲次郎が率いる宣徳隊が禁門の変に参加し、藩内抗争では奇兵隊らとともに活躍しました。

維新後の華族、そして没落

明治維新後、当初は士族でしたが、明治33年（1900年）、毛利重輔が男爵に叙せられました。重輔は鉄道省官僚を経て日本鉄道会社の副社長を務めるなど、近代日本の発展にも貢献しました。しかし、その後の吉敷毛利家の歴史は、華族としての栄華と没落という歴史の両面を物語っています。邸宅は東京市大森区田園調布にありましたが、子孫である大田報助により『毛利十一代史』が発刊されるなど、歴史の記録と保存にも尽力しました。吉敷玄済寺裏山には、歴代当主の墓が今も残されています。

歴代当主と系譜

吉敷毛利家の歴代当主は、小早川隆景、小早川秀包から始まり、毛利元鎮、毛利元包、毛利就直、毛利広包、毛利元直、毛利就将、毛利就兼、毛利房直、毛利包詮、毛利房裕、毛利房謙、毛利元一、毛利親直、毛利重輔、毛利忠三、毛利忠男、毛利正男と続きます。それぞれの当主は、それぞれの時代において、吉敷毛利家の発展に貢献しました。その系譜は複雑で、養子縁組や婚姻関係などによって、様々な毛利家の支族と繋がっています。

吉敷毛利家の歴史的意義

吉敷毛利家は、毛利氏の庶流でありながらも、江戸時代を通じて長州藩の有力家門として重要な役割を果たしました。また、維新後には華族に列し、近代日本の発展にも貢献したことは特筆に値します。その歴史は、単なる武家・士族・華族の歴史にとどまらず、日本の歴史の一断面を反映しているといえるでしょう。彼らの功績と歴史は、今もなお人々の記憶に刻まれています。

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