吉田英三

吉田英三：初代自衛艦隊司令、その生涯

吉田英三（よしだ ひでみ/えいぞう）は、1902年3月5日に生まれ、1978年4月24日に没した、日本の海軍軍人であり、海上自衛官です。最終階級は海将。初代自衛艦隊司令として、海上自衛隊の礎を築いた人物として知られています。

生い立ちと海軍入隊

福島県で農業を営む家庭に三男として生まれた吉田は、旧制磐城中学校を経て海軍兵学校に入校。1922年6月に卒業し、海軍軍人としてのキャリアをスタートさせました。その後、海軍大学校も卒業し、海軍の中枢で活躍しました。最終階級は海軍大佐で、軍務局第三課長を務めています。

戦後の活動と海上自衛隊創設

終戦により旧海軍が解体されると、吉田は復員に必要な人事情報に精通していたため、第二復員局に勤務。この時期から、職務で得た情報と人脈を使い、「新海軍」の再建計画を密かに進めていました。一度は日本政府に拒否されたものの、朝鮮戦争後には野村吉三郎と共にアメリカ政府へ働きかけ、好感触を得ます。この活動が、後の海上自衛隊創設につながりました。

吉田は、海上自衛隊創設の主要メンバーである「Y委員会」の一員となり、海上保安庁海上警備隊横須賀地方監部長（現・横須賀地方総監）を経て、第1船隊群司令、自衛艦隊司令を歴任しました。

自衛隊の在り方についての提言

内閣憲法調査会の「憲法運用の実際についての第三委員会」に参考人として招かれた際、吉田は自衛艦隊司令としての経験から、「自衛隊を精強な部隊とするためには、名目上でも国家の象徴である天皇を最高指揮官とするのが最善である」という意見を述べています。この発言は、自衛隊の在り方について深く考察していたことを示しています。

年譜

1919年（大正8年）8月：海軍兵学校入校
1922年（大正11年）6月：海軍兵学校卒業（第50期）
1923年（大正12年）9月：海軍少尉任官
1925年（大正14年）12月：海軍中尉
1927年（昭和2年）12月：海軍大尉
1928年（昭和3年）12月：海軍水雷学校高等科卒業
1929年（昭和4年）4月：ドイツ駐在（- 1931年4月）
1931年（昭和6年）
5月：駆逐艦「峯風」水雷長
11月：駆逐艦「朝霧」水雷長
1933年（昭和8年）11月：海軍少佐
1934年（昭和9年）
7月：海軍大学校（甲種32期）卒業
11月：軽巡洋艦「神通」水雷長
1935年（昭和10年）10月：「睦月」駆逐艦長
1936年（昭和11年）11月：第一水雷戦隊参謀
1937年（昭和12年）12月：軍令部第3部第7課部員
1938年（昭和13年）11月15日：海軍中佐
1939年（昭和14年）11月15日：第二水雷戦隊参謀
1941年（昭和16年）
8月15日：軍令部出仕兼海軍省出仕
10月10日：海軍省軍務局局員兼海軍技術会議議員
1943年（昭和18年）
5月1日：海軍大佐、海軍艦政本部出仕兼海軍省軍務局局員海軍技術会議議員
7月10日：海軍省軍務局局員兼海軍技術会議議員
1944年（昭和19年）
4月1日：兼補軍令部部員大本営海軍参謀
8月1日：免兼軍令部部員
1945年（昭和20年）
2月25日：軍務局第1課付
4月15日：特兵部部員兼海軍省軍務局局員
6月25日：軍令部出仕兼海軍省出仕
7月10日：海軍省軍務局第三課長兼軍令部部員海軍技術会議議員大本営海軍参謀海軍戦備部部員
11月30日：予備役に編入
12月1日：第二復員省総務局局員
1947年（昭和22年）5月27日：復員庁第二復員局資料整理部長
1948年（昭和23年）1月1日：復員局第二復員局残務処理部資料課長
1952年（昭和27年）
5月15日：海上警備官に任命、海上警備監補に叙される。横須賀地方監部長に就任
8月1日：保安庁警備隊発足に伴い階級呼称を警備監補に改称。横須賀地方監部長改め初代 横須賀地方総監
1953年（昭和28年）4月1日：第一船隊群（現・第1護衛隊群）司令兼ねて第三船隊群司令
1954年（昭和29年）
7月1日：海将に任命、初代自衛艦隊司令兼ねて第1護衛隊群司令
9月20日：第3代 横須賀地方総監（再任）
1958年（昭和33年）
6月1日：練習隊群司令
12月19日：退官
1972年（昭和47年）4月29日：勲二等瑞宝章受章
1978年（昭和53年）4月24日：東京都内の自宅にて慢性気管支炎による心臓衰弱のため逝去（享年76）、叙・正四位。

栄典

勲二等瑞宝章 - 1972年（昭和47年）4月29日

参考文献

秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
増田弘　『自衛隊の誕生　日本の再軍備とアメリカ』　中公新書、2004年

吉田英三は、激動の時代を生き抜き、日本の防衛に大きく貢献した人物です。その功績は、今日の海上自衛隊にも脈々と受け継がれています。

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