名崎送信所

名崎送信所は、茨城県古河市（旧結城郡名崎村）に位置し、KDDIの土地をNTTが借りて運営していた電波送信所です。旧電電公社時代から正式には「名崎無線送信所」と呼ばれていました。その歴史は、国際電話会社が短波無線送信所としてこの地を選んだことから始まります。

開局から終戦まで

1933年、国際電話会社は短波帯無線電波の送信所として広大な土地を求めていました。関東平野の中心に位置する名崎村がその条件を満たし、土地取得が始まりました。1934年 4月29日、アジア近隣諸国向けの国際電話、そしてNHK国際放送の中継業務が開始されました。当初は欧米向け20kW送信機2台、アジア近隣諸国向け10kW送信機3台が使用されました。

1938年、戦時下の国策により国際電話会社は日本無線電信と合併し、国際電気通信として再編されました。名崎送信所も同社の所有となります。1940年には隣接する八俣村に八俣送信所が開設され、NHK国際放送は両送信所から並列で送信されるようになりました。1942年、太平洋戦争の激化に伴い、プロパガンダ放送や植民地・海外移住者向けの電話に特化しました。

1945年、大日本帝国は連合国軍に降伏。名崎送信所は、8月15日の玉音放送を全世界に発信した後、連合国軍の管理下に置かれました。9月2日には降伏文書が放送され、同年9月4日に全ての送信が停止されました。

KDD時代

1947年、国際電気通信はGHQの命令で解散し、逓信省の傘下に入りました。1949年に電気通信省となり、国際電気通信条約に再加盟し国際通信に復帰。1952年、日本電信電話公社への移行を経て、1953年に国際電信電話（KDD）の所有となりました。

1955年にはNHK国際放送用に100kW送信機が設置され、1956年には南極向けのラジオ実験放送も行われました。しかし、海底ケーブルや衛星通信の発達により、1969年にKDDは短波無線の整理・統合計画を発表。国際放送は八俣送信所に一本化、国際電話業務は小山送信所に移転することになりました。1972年、電電公社は短波送信所の再編計画を発表し、名崎送信所を電電公社の送信所として新設することを決定。1973年 3月にKDD所有としての名崎送信所は閉鎖・解体され、1975年 9月に電電公社の送信所として再開しました。土地はKDDIから借り上げる形でした。

電電公社からNTTの送信所へ

1977年、千葉県の検見川[[送信所]]が閉鎖され、同送信所から発信されていた標準周波数局JJYの時刻及び標準電波生成機能を含む送信設備が名崎送信所へ移設されました。その他、共同通信社、時事通信社、気象庁、海上保安庁、防衛庁（現・防衛省）の通信もここで送信されるようになりました。1982年にはVOLMET放送の電波形式がA3J（SSB）に更新されました。1986年には国内無線気象通報のJMBが停波し、同年、第二送信所を拡大、臼井無線送信所からの電波も移設されました。この時、名崎無線送信所は送信機75台、ダイポール54面、モノコーン13面、長波2面のアンテナを有する大規模な送信所となりました。

終焉へ

1990年代に入ると技術の進歩により、名崎送信所からの電波は段階的に整理されていきました。1995年にはウルシグラム放送が終了。1999年にはJJF2がえびの送信所に移駐。2001年にはJJYがはがね山標準電波送信所へ移転し閉局。2003年にはJJCがマレーシアへ移管され、2004年にはJMH4とJMH6も停波しました。

最後まで残ったJMHと東京VOLMETは、2009年 3月4日に鹿児島県枕崎市の漁業無線局へ移転し、名崎送信所は75年の歴史に幕を下ろしました。

再開発

閉局後、名崎送信所は携帯電話鉄塔を除いて解体され、跡地は工業団地として整備されました。2010年には日野自動車が跡地を購入し、2012年から古河工場の建設が始まりました。2024年には三菱ふそうトラック・バスとの経営統合が予定されており、日野自動車日野工場は閉鎖される予定です。日野の本社は、三菱ふそうトラック・バスの本社に集約される見込みです。

登場作品

映画『ガメラ2 レギオン襲来』では、小型レギオンの群れをガメラから引き離すために、この名崎送信所から電波発信する場面が登場します。

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