向井一男

向井一男（むかい かずお）

向井一男は、明治33年（1900年）3月27日に愛媛県で生まれ、昭和44年（1969年）1月24日に生涯を閉じた囲碁棋士です。田坂信太郎門下として方円社、後に日本棋院に所属し、八段に昇りました。昭和10年（1935年）の全日本囲棋選手権大会での優勝や、日本棋院棋士会長を務めたことで知られています。

生涯

愛媛県越智郡伯方島で生を受けた向井は、大正3年（1914年）に上京し、同じく尾道出身の方円社、田坂信太郎に入門しました。大正7年（1918年）に初段となり、大正9年（1920年）には若手棋士による六華会を設立。

大正13年（1924年）に日本棋院設立に参加し、大正15年（1926年）の院社対抗戦では4人抜きという活躍を見せました。同年から1年間、比叡山の修学院村に籠って修行に励みました。

昭和10年（1935年）には、四段の時に本因坊戦の前哨戦である全日本囲棋選手権大会で、鈴木為次郎、呉清源とのリーグ戦を制し優勝。本因坊秀哉に私淑し、教えを乞うようになりました。当時の新布石の流行には乗らず、独自の棋風を追求しました。

昭和14年（1939年）の第1期本因坊戦では甲組四段トーナメントで優勝し、五段級トーナメントに進出。昭和16年（1941年）に五段に昇段。昭和44年（1969年）には大手合で14連勝を記録し、七段に。同年逝去し、八段を追贈されました。

昭和43年（1968年）には、ナダレ定石の新手で『囲碁新潮』第1回新手賞を受賞。その風貌から「こん」というニックネームで親しまれていました。門下には山部俊郎、井手八百次郎、小坂田幸次、小山久良らがいます。

鈴木為次郎との対局後、「黒3の手早計なり」と語ったことが、3手目が敗着という噂になった逸話も残っています。

棋風と人柄

向井一男は、その実直な人柄と粘り強い棋風で知られていました。新布石に走らず、古典的な打ち方を重んじながらも、常に新しい可能性を追求する姿勢は、多くの棋士に影響を与えました。また、若手棋士の育成にも尽力し、囲碁界の発展に大きく貢献しました。

日本棋院対棋正社勝継手合

1926年 4-1
先番○雁金準一
先番○野沢竹朝
先番○高部道平
二子○雁金準一
二子×野沢竹朝

参考文献

木谷實『囲碁百年 2 新布石興る』平凡社 1968年
坂田栄男『囲碁百年 3 実力主義の時代』平凡社 1969年
* 伊藤敬一「思い出の棋士 向井一男八段」（『棋道』誌1985年12月号）

もう一度検索