吾妻通

吾妻通：神戸の街の歴史を刻む、生田川沿いの町

神戸市中央区に位置する吾妻通は、国道2号線北側、春日野道商店街西側、生田川東側に広がる町です。郵便番号は651-0076。住宅街と商業地が混在するこの地域は、東に脇浜町、南に北本町通、西に雲井通、北に日暮通と隣接しています。吾妻通は一丁目から六丁目まであり、それぞれに個性豊かな歴史と現状が共存しています。

歴史：スラムからの再生、そして現代へ

吾妻通の町名は、明治34年(1901年)に葺合町の耕地整理に伴い誕生しました。町名の由来については諸説ありますが、『神戸の町名 改訂版』では道路整備を担当した「吾妻組」にちなんで名付けられたという説を疑問視し、日暮通、八雲通、東雲通といった周辺の町名との関連性を示唆しています。

この地域は、かつて新川スラムと呼ばれる貧困地域でした。しかし、明治42年(1909年)から、賀川豊彦がキリスト教の布教活動を開始し、この地で多くの社会活動を行いました。この活動は、吾妻通の社会構造に大きな影響を与えたといえます。

大正11年(1922年)には吾妻尋常小学校が開校しました。その後、平成9年(1997年)に中央小学校へ統合され廃校となりましたが、その跡地は平成12年(2000年)に神戸市生涯学習支援センターとして生まれ変わりました。

地理：交通の要衝、そして地域施設

吾妻通は、阪神春日野道駅（一丁目）を始めとした交通の便も良く、生活利便性の高い地域です。地域内には、かつて吾妻小学校があったほか、葺合消防署、神戸市立あづま幼稚園、吾妻公園、葺合警察署、賀川記念館（日本基督教団神戸イエス団教会本部・神戸イエス団教会・友愛幼稚園）、生田川公園など、多くの公共施設や教育施設が点在しています。これらの施設の存在は、地域住民の生活を支える重要な基盤となっています。生田川を挟んで雲井通とは雲井橋、新生田川橋（国道2号線）で結ばれています。

人口：変遷と現状

平成17年(2005年)の国勢調査によると、吾妻通の世帯数は650世帯、人口は1118人(男性583人、女性535人)でした。昭和63年(1988年)には世帯数606世帯、人口1278人だったことから、人口は減少傾向にあることがわかります。これは、都市部における一般的な傾向と一致しています。

まとめ：歴史と現在が共存する街

吾妻通は、明治時代からの歴史を背景に、スラムからの再生、そして現代社会へと発展を遂げてきた地域です。賀川豊彦の活動拠点として知られる一方、現在も多くの住民が生活し、地域に根付いた施設が数多く存在しています。歴史と現代が共存する吾妻通は、神戸市中央区を語る上で欠かせない場所と言えるでしょう。今後も、この地域の変遷を注意深く見守っていく必要があります。

参考文献

神戸史学会 編『神戸の町名 改訂版』神戸新聞総合出版センター、2007年。ISBN 978-4-343-00437-6
「角川日本地名大辞典」編纂委員会 竹内理三 編『角川日本地名大辞典 28 兵庫県』角川書店、1988年。ISBN 978-4040012803

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