喜劇 駅前弁当

『喜劇 駅前弁当』：浜松を舞台にした駅前シリーズの新たな魅力

1961年12月24日、東宝系で公開された『喜劇 駅前弁当』。キャッチコピーは「色と欲のスシ詰弁当! 売るのも買うのも好き者ばかり!」と、賑やかで魅力的な作品であることを予感させます。シリーズ3作目にして、舞台は東京から離れ、静岡県浜松市へと移ります。これは『駅前シリーズ』において大きな転換点と言えるでしょう。

地方都市での活気と人間模様

本作の舞台は浜松駅前の弁当屋。首都圏とは異なる地方都市の活気や人情味あふれる人間模様が描かれています。同年公開の『続・社長道中記』（森繁久彌主演）も浜松市でロケが行われており、森繁久彌は1年で2度も浜松を訪れることとなりました。

前作から引き続き出演する坂本九（洗濯屋役）に加え、喜劇界の大御所である花菱アチャコ（アチャコ名義）と柳家金語楼といった豪華な顔ぶれが脇を固めます。さらに、『社長シリーズ』でお馴染みの加東大介も出演。そして、新東宝映画の看板女優だった三原葉子が、新東宝倒産後フリーとなり、本作で東宝系映画に唯一出演しています。ストリッパー役という、彼女にとって新たな挑戦と言える配役も興味深いところです。

スタッフとキャスト：実力派が集結

監督は久松静児、脚本は長瀬喜伴。撮影、録音、照明、美術、音楽、編集など、スタッフ陣も実力派が揃っており、作品全体のクオリティの高さを支えています。

出演者は森繁久彌を筆頭に、フランキー堺、伴淳三郎、淡島千景、黛ひかるといった錚々たるメンバーが名を連ねています。脇を固める個性豊かな俳優陣の演技も、作品に深みを与えています。

ロケ地は浜松駅周辺だけでなく、浜松城、舘山寺温泉、浜名湖パルパル（当時舘山寺遊園地）、瀬戸橋、猪鼻湖神社、中田島砂丘、浜松オートレース場、弁天島など、浜松の各地が舞台となっています。当時の浜松の風景を垣間見ることができる貴重な記録と言えるでしょう。

同時上映作品と時代背景

同時上映は『アワモリ君西へ行く』（坂本九主演）です。これもまた、当時のヒット作品であり、本作との組み合わせが当時の興行事情を反映していると言えるでしょう。『アワモリ君』シリーズは本作で最終作を迎えます。

劇中では、当時のヒット曲である「スーダラ節」が流れていたり、大きな台風（劇中では1961年の台風21号として描かれているが、実際には日本には影響がない）のシーンが登場するなど、当時の社会情勢や流行が反映されています。

まとめ：時代を超えて愛される喜劇

『喜劇 駅前弁当』は、豪華なキャスト、美しい風景、そして軽妙な笑いが織りなす、時代を超えて愛される喜劇作品です。浜松の街並みを背景に繰り広げられる人間模様、そして当時の社会情勢を反映した描写は、現代の観客にとっても新鮮で興味深いものと言えるでしょう。この作品を通して、1960年代の日本社会の一端に触れることができる貴重な機会となっています。地方都市を舞台にしたことで、シリーズに新たな風を吹き込み、新たな魅力を生み出した、重要な作品と言えます。

もう一度検索