四角 (記号)

四角記号の多岐にわたる役割

四角（しかく）記号は、その形状の多様性から、単なる幾何学的な図形としてだけでなく、様々な分野で特定の意味や役割を持つ記号として広く用いられています。最も一般的なのは正立した正方形「□」ですが、他にも斜めの正方形「◇」、縦長や横長の長方形「▭」「▯」、菱形「♢」など、多種多様な四角記号が存在します。

印刷における四角記号

印刷業界では、単に「四角」という場合、通常は正立した正方形「□」を指します。斜めの正方形は「ひし形」や「ダイヤ」と呼ばれることが一般的です。正方形の四角記号は、「しろしかく」とも呼ばれます。

数学での応用

初等数学では、四角記号「□」は正方形を表すのに用いられます。例えば、「□ABCD」は、点A、B、C、Dを頂点とする正方形を示します。また、一般的な四角形や台形を表す記号のほか、長方形や平行四辺形を表す「▭」や「▱」も使われます。

さらに、数学記号として、ダランベール演算子にも四角記号が用いられます。ダランベール演算子は、波動方程式など物理学の分野で重要な役割を果たす演算子です。

□ = △ - (1/c²) (∂²/∂t²) = (∂²/∂x²) + (∂²/∂y²) + (∂²/∂z²) - (1/c²) (∂²/∂t²)

ここで、c は波の速度（特に光速）を、△はラプラシアンを表します。この記号は、記法によっては逆符号となることがあります。Unicodeでは専用の文字U+29E0「⧠」が割り当てられています。

様相論理学における四角記号

様相論理学では、四角記号「□」は必然性演算子として用いられます。これは、ある命題が必然的に真であることを示すものです。

□p ↔ ¬◇¬p

タイポグラフィにおける四角記号

タイポグラフィでは、四角記号は様々な用途で使用されます。

文字の代替: 判読不能な文字を示すために「□」が用いられます。例えば、写本の釈文を作成する際、判読できない文字は「□」で表し、文脈から補った文字は「□」で囲みます。字数不明の場合は枡記号「〼」を使用することがあります。
文字化けの表現: 活字やフォントがないために表示できない文字があることを示すために用いられます。これは俗に「豆腐」とも呼ばれます。
メタ文字: 例として、レ点の図示に「□レ」のように使用されます。
伏字: 一部の情報を隠すために使用されます。
漢字の分解: 漢字の偏や旁などの分解を示す際に、漢字全体を「□」で示します。
囲み文字: Unicodeでは囲み用四角「⃞」(U+20DE)が割り当てられています。
チェックボックス: チェックボックスの枡として使用されます。Unicodeでは専用の文字「☐」(U+2610)があります。
入力欄: クロスワードパズルや虫食い算など、一文字を入れる欄として使用されます。
段落区切り: 意味段落の区切りとして用いられます。
和字間隔: 和字間隔を示すためにも使用され、例えば「□今日は」は行頭1字空けを意味します。
面積: 平方（面積の単位）を示すために使用され、例えば「⏍」は平方フィートを表します。
APL記号: APL記号の多くの枠で使用されます。等幅1文字分のスペースを使うため、やや縦長であることが多いです。

その他の用途

占星術: 占星術や天文学では、矩（スクエア、クォータイル）として、アスペクト（2つの天体の黄経差）が90度であることを示します。
数値制御記号: 数値制御記号でブロックを示すために使用されます。
製図: 製図で正方形を示すために用いられます。例えば、「□35ミリメートル」は一辺35ミリメートルの正方形を表します。
交配図・系図: 交配図や系図では雄を表します。
株式相場: 株式相場では新株落ちや権利落ちを示します。
フローチャート: フローチャートでは補助操作を示すために使用されます。

黒塗りの四角記号「■」

黒塗りの四角記号「■」も、様々な用途で使用されます。

箇条書き: 箇条書きのビュレットとして使用されます。
伏字: 伏字としても用いられます。
AV機器: AV機器の停止ボタンとして使用されます。
墓石記号: 墓石記号（ハルモス記号）として、証明の終わりにQ.E.D.の代わりに使用されます。通常は縦長で、まれに中抜きのものが使用されます。Unicodeでは専用の文字「∎」(U+220E)があります。
テキストファイル: テキストファイルのEnd Of File (EOF)を示すためにも使用されます。

四角記号として使われる文字

四角記号の形状を持つ文字も存在します。

片仮名の「ロ」（ろ）
漢字の「口」（くち）
ブラーフミー文字の「𑀩」（b(ə)）
突厥文字の「𐰿」（ʃ）
ハングルの「ㅁ」（ミウム）

まとめ

四角記号は、そのシンプルな形状とは裏腹に、多種多様な分野で重要な役割を果たしています。数学、論理学、タイポグラフィ、占星術、製図、株式相場など、様々な領域で、図形表現、操作記号、区切り記号、文字の代替など、多岐にわたる機能を果たしています。この汎用性の高さこそが、四角記号が広く用いられる理由の一つと言えるでしょう。