国宝絵画の一覧

国宝絵画とは

日本の文化財保護法に基づき、特に価値が高いと認められた有形文化財が「国宝」に指定されます。絵画もその対象であり、日本の美術史を彩る重要な存在です。本項では、1951年以降に国宝に指定された絵画作品を中心に、その歴史的背景や特徴、所蔵状況などについて詳しく解説します。

国宝の定義と変遷

1897年以降、日本では優れた有形文化財を「国宝」として指定していましたが、1950年の文化財保護法施行に伴い、従来の国宝は「重要文化財」となり、その中から新たに国宝が選ばれるようになりました。この新しい国宝は「新国宝」とも呼ばれ、最初の指定は1951年6月9日に行われました。

国宝絵画の保護と規制

国宝絵画は、文化財保護法によって厳格に保護されています。譲渡や海外への輸出は原則禁止されており、所有者は損傷や紛失の際には公表する義務があります。また、修復のための移動や所有者変更も文化庁の許可が必要です。

国宝絵画の概要

国宝は、「重要文化財のうち、世界文化の見地から価値が高く、国民の宝となるもの」として文部科学大臣が指定します。国宝絵画は、8世紀の奈良時代から19世紀の江戸時代までの作品が指定されており、その数は159件（2012年9月時点）に上ります。ただし、この件数は作品数ではなく、文化財としての指定件数です。例えば、『十二天像』のように、複数の作品が1件の国宝に指定されている場合もあります。

国宝絵画の題材は多岐にわたり、仏教画、山水画、肖像画、風俗画などがあります。また、『源氏物語絵巻』のように、特定の文学作品を題材としたものや、中国から伝来した絵画も国宝に指定されています。作品の題名は、作者によるものではなく、内容に基づいて後世に名付けられたものがほとんどです。

日本絵画の歴史と国宝絵画

日本の絵画は、仏教伝来とともに中国から伝わった仏教画に端を発します。その後、時代とともに様々な様式が生まれ、発展を遂げてきました。以下に、時代ごとの絵画の特徴と、その時代を代表する国宝絵画について解説します。

飛鳥・奈良時代

6世紀半ばに仏教が伝来した際、中国から仏教画ももたらされました。飛鳥時代前期から後期（白鳳期）にかけての日本絵画の遺品は極めて少なく、法隆寺の玉虫厨子（工芸品）の装飾画や中宮寺の天寿国繡帳（工芸品）などがわずかに残る程度です。これらの初期仏教画には、中国南北朝時代から隋の仏教画の影響が見られます。

白鳳期から奈良時代にかけては、唐の影響を受けた絵画が現れ、『高松塚古墳壁画』や『麻布著色吉祥天像』などがその代表例です。この時代の絵画は仏教を主題としたものが多く、作者不明のものも多く存在します。奈良時代は彫刻作品が多く残っている一方で、絵画の現存例は少ない状況です。

平安時代

9世紀初頭には、空海と最澄によって真言宗と天台宗がそれぞれ唐から伝わり、密教美術として曼荼羅が多く描かれるようになりました。また、浄土教の発展に伴い、来迎図の様式も発達し、『平等院鳳凰堂中堂壁扉画』のような阿弥陀如来を題材とした絵画も多く描かれるようになりました。

平安時代中期には、唐絵から日本独自の「大和絵」が主流となります。襖絵や屏風絵として発展した大和絵は、平安時代末期には絵巻物にも盛んに描かれるようになり、『源氏物語絵巻』や『伴大納言絵詞』などが制作されました。絵巻物は、鎌倉時代になっても制作されましたが、絵画よりも彫刻作品が好まれる傾向にありました。

鎌倉・室町時代

鎌倉時代から室町時代にかけて、中国の宋や元の影響を受けた水墨画が発展します。墨のみで描かれる水墨画は、それまでの多色絵巻物よりも人気を集めました。室町時代には、山水画が禅僧によって発展し、周文や雪舟といった名だたる画僧が登場しました。雪舟は、『四季山水図巻』など、6点が国宝絵画に指定されています。水墨画は、当初は寺院のために描かれたものが多かったのですが、室町時代後期には狩野派の画家たちの手本となっていきました。

安土桃山・江戸時代

安土桃山時代の絵画は、金銀箔を多用した極彩色の壮大なものが特徴です。戦国大名の城郭装飾として、大規模な絵画が用いられました。この時代以降、狩野派は有力武家の保護を受け、300年にわたり日本絵画の主流を占めました。

江戸時代には、大規模で多色使いの絵画が引き続き流行し、俵屋宗達や尾形光琳を代表とする琳派が、平安時代の古典文学を題材にした作品を鮮やかな色彩で描き出しました。18世紀には、中国の文人画が日本に伝わり、南画として成立しました。池大雅や与謝蕪村といった画家が活躍しました。

国宝絵画の所蔵状況

国宝絵画は、博物館、美術館、寺院、神社、個人、大学など、様々な場所に所蔵されています。特に東京国立博物館と京都国立博物館には多くの作品が所蔵されており、都道府県別では、京都府、東京都、奈良県に多くの国宝絵画が存在します。施設別では、東京国立博物館の所蔵数が最も多くなっています。

まとめ

国宝絵画は、日本の美術史を語る上で欠かせない重要な文化財です。時代ごとに異なる様式や技法、表現を鑑賞することで、日本の歴史や文化を深く理解することができます。ぜひ、実物の国宝絵画に触れ、その魅力に触れてみてください。



参考文献

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Mason, John Godwin (1997) [1973]. A history of Japan (2nd revised, illustrated ed.). Tuttle Publishing.
根津美術館 liberal arts section『佛教の聖画: 十二世紀を中心とする平安仏画の精随 : 開館五十五周年記念特别展』根津美術館、1996年.
高田修、柳沢孝『仏画』小学館、1974年.
H. Paul Varley (2000) [1973]. Japanese culture (4th ed.). ハワイ大学出版局.

外部リンク

e-国宝 国立博物館所蔵 国宝・重要文化財

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