国鉄ケ200形蒸気機関車

ケ200形蒸気機関車：知られざる特殊狭軌のパイオニア

ケ200形は、かつて日本国有鉄道（国鉄）およびその前身である鉄道院、鉄道省に在籍した、特殊狭軌線用のタンク式蒸気機関車です。その小さな車体と短い生涯からは想像できない、数奇な運命をたどりました。

概要

ケ200形は、出力90馬力、全長6m足らず、重量15.5トンというコンパクトな車体を持つ、車軸配置0-6-0(C)型のサイド・ウェルタンク機関車です。全軸距は1,800mm。その原型は、1902年にドイツのオーレンシュタイン・ウント・コッペル社で製造された、1,000mm軌間のシュローダ環状鉄道の3 - 5号機に求められます。運転台の深い屋根と、小判形でハの字形に取り付けられた前面窓が特徴的な外観をしています。

湧別軽便線での誕生と終焉

1911年（明治44年）、北海道開拓のため、湧別軽便線の延長区間（留辺蘂 - 社名淵間）が762mm軌間で建設されることになりました。その建設・営業用として、1912年（大正元年）にオーレンシュタイン・ウント・コッペル社で7両（製造番号5804 - 5810）が製造されたのが、ケ200形です。日本到着後、旭川工場で組み立てられ、1913年5月1日付けで3両（ケ200 - 202）、同年7月16日付けで4両（ケ203 - 206）が留辺蘂に配置されました。

ケ200形は、日本の国有鉄道としては初めての特殊狭軌線用機関車でしたが、形式数字は「200」が与えられました。当時の特殊狭軌線用車両の形式称号は、「機関車ニ在リテハ型式称号及番号ニ「ケ」…ヲ冠ス」と定められていたのみで、形式数字の体系は明確ではありませんでした。そのため、ケ200形を基準に、車軸配置や大きさによって上下に展開していこうとしたと推測されていますが、数字の「200」自体に特別な意味はなかったと考えられています。

しかし、ケ200形が営業用として活躍した期間は、非常に短いものでした。湧別軽便線は他の線区と軌間が異なるため、接続駅での貨物積み替えに大きな労力を要しました。また、路線の延伸計画が持ち上がり、本線規格への改軌が決定されたため、開業からわずか1年後の1916年（大正5年）11月7日に、1,067mm軌間への改軌工事が完成したのです。これにより、ケ200形は製造後わずか4年半で、1917年（大正6年）1月11日付けで全車が廃車となりました。

丹那トンネル工事と各地への転用

廃車後、ケ200 - 203の4両は、丹那トンネル建設工事用として復活。熱海線建設事務所に配属され、資材運搬に使用されました。配置は、東口にケ201、ケ203、西口にケ200、ケ202でした。その後、西口の軽便線が1,067mm軌間に改軌された際、西口の2両が東口に転属したか、そのまま使用停止となったかは不明です。東口では、1925年（大正14年）3月の熱海 - 湯河原間開業まで使用されました。

その後、ケ200、ケ202は盛岡鉄道局へ、ケ201は東京鉄道局（久留里線）、ケ203は仙台鉄道局（魚沼線）へと転属。さらに、ケ200、ケ202は上越線清水トンネル北口の建設工事にも投入されました。工事終了後は、信濃川発電所の建設工事に使用され、1957年（昭和32年）まで活躍しました。

久留里線に転属したケ201は、1931年（昭和6年）に解体。魚沼線に転属したケ203は、栃尾鉄道に譲渡され、1956年（昭和31年）に廃車されました。

台湾での再起と保存

ケ204は、スクラップとして台湾の台東製糖会社に譲渡され、再整備の上、専用線で使用されました。その後、台湾総督府鉄道に編入され、L30形32、L30形30、LC12形LC121と改番。太平洋戦争後には台湾鉄路管理局に引き継がれ、LCK30形LCK31となりました。その間に、運転台や側水槽は大幅に改造され原型を失いましたが、廃車後は台湾花蓮県新城郷の光隆企業公司で静態保存されています。

草軽電気鉄道への譲渡とその後

ケ205、ケ206は、草津軽便鉄道（後の草軽電気鉄道）に譲渡され、3、4と改番されました。しかし、重量過大のため持て余し、半年後には北海道製鉄輪西工場（後の富士製鉄室蘭製鋼所）に譲渡。ここでは、軌間が1,067mmに改造され、連結器も自動連結器に交換されました。番号はS-102、S-103と改められ、1954年8月に解体されました。

現在

台湾に渡ったケ204（LCK31）が、唯一現存するケ200形として静態保存されています。

ケ200形は、短期間の活躍、各地への転用、そして海外での再起と、波乱に満ちた生涯を送った機関車でした。その歴史は、日本の鉄道史における特殊狭軌の黎明期を物語る貴重な証言となっています。

もう一度検索