国鉄スヌ31形客車

スヌ31形暖房車：国鉄を支えた異色の客車

スヌ31形は、かつて日本国有鉄道（国鉄）に在籍した事業用客車、具体的には暖房車です。1929年から製造された東海道本線用の大型暖房車として、その生涯をスタートさせました。

誕生と変遷

1929年に3両、1931年に21両、合計24両が製造されました。製造当初はスヌ6850形（スヌ6850 - 6874）と称していましたが、1941年の番号体系変更後も旧形式番号のままでした。1949年7月、暖房車も鋼製客車の番号体系に組み込まれることになり、当時在籍していた22両がスヌ31形として新たなスタートを切りました。

製造所は以下の通りです。

1929年（3両）：川崎車輛（スヌ6850 - スヌ6852）
1931年（21両）：川崎車輛（スヌ6853 - スヌ6856, スヌ6867）、日本車輌製造（スヌ6857 - スヌ6866, スヌ6869 - スヌ6873）

構造

車体は全鋼製で、全長7,700mmの車体の前後に長さ1,450mmのデッキを備え、前位に水タンク、後位に炭庫を装備した凸字型が特徴です。中央部の車体内には蒸気発生用のボイラーが搭載されています。

両側の妻面には片開き扉が車体に向かって右側に設けられ、水槽と炭庫は左側にオフセットして設置されています。側面の窓配置は1D3D1。屋根上にはガーランド型通風器と煙突が設置されており、ボイラー整備のために屋根の一部を取り外せる構造でした。全長は11,500mm、全高は4,000mmです。

台車は当時の客車用標準2軸ボギー台車TR23を使用し、台車中心間距離は5,800mmでした。

ボイラーの能力は常用圧力10kg/cm2、火床面積0.85m2、全伝熱面積27.1m2（煙管22.0m2、火室5.1m2）。運転整備重量は37.6t、空車重量は30.15t、水槽容量は5.2m3、石炭積載量は0.8tでした。

運用と活躍

製造当初は東海道本線東京 - 国府津間用として国府津機関区に配置されました。1934年12月1日に丹那トンネルが開通すると沼津機関区に転属。東海道線用暖房車の主力として、優等列車やお召し列車にも使用されました。

太平洋戦争中の1944年12月4日には2両（スヌ6872, スヌ6873）が廃車。その理由は謎に包まれています。一説には、標準軌に改軌のうえ朝鮮総督府鉄道に供出されたとも言われています。京元線や京慶線で使用された可能性があり、戦後に類似車両の情報もありますが、確証はありません。

戦後、2両（スヌ6853, スヌ6867）が連合軍専用客車として接収され、3503, 3501の軍番号を付与されました。接収は1946年12月、返還は1949年6月。連合軍専用列車を駅に据え付ける際にトイレや洗面台を使用できるよう、空気圧縮機が設置されました。これは返還後も取り外されることはありませんでした。

1949年7月の改番では、22両がスヌ31形に改称されました。番号順に新番号（スヌ31 1 - 22）が付与されましたが、連合軍専用客車に指定されていた2両は100番台（スヌ31 100, 101）に区分されたため、スヌ31 4とスヌ31 18は欠番となりました。

1949年7月から10月にかけて、炭水容量を増加する改造が大宮工機部、長野工機部、浜松工機部で実施され、水7t、石炭2tとされました。

その後、暖房用ボイラーを搭載した新EF58形電気機関車やマヌ34形が増備されると、暖房用ボイラーを持たないEF53形電気機関車とともに高崎線や上越線に転属。奥羽本線、中央本線、阪和線、北陸本線など、各地で使用されました。

1968年10月1日のダイヤ改正で上野駅乗り入れの定期運用が消滅。老朽廃車が始まり、1973年3月、最後に残った阪和線用のスヌ31 1と2が廃車され、形式消滅となりました。

参考文献

* 岡田誠一「RM LIBRARY 44 国鉄暖房車のすべて」2003年、ネコ・パブリッシング刊 ISBN 4-87366-334-2

もう一度検索