土佐国分寺

土佐国分寺は、高知県南国市にある真言宗智山派の寺院で、山号を摩尼山、院号を宝蔵院と称します。本尊は千手観世音菩薩で、四国八十八箇所霊場の第二十九番札所として、多くの参拝者が訪れます。札所寺院としては、一般的に「国分寺」と呼ばれています。この寺は、国の史跡にも指定されており、その歴史的価値は非常に高いと言えるでしょう。

歴史

土佐国分寺は、聖武天皇が発した「国分寺建立の詔」により、全国に建立された国分寺の一つです。寺伝によれば、天平13年（741年）に行基菩薩が千手観世音菩薩を刻み、本尊として安置したのが始まりとされています。その後、弘仁6年（815年）には、空海（弘法大師）が毘沙門天を刻んで奥の院に安置し、星供の秘法を修めたことから、この寺は星供の根本道場となり、「星供大師」と呼ばれる大師像が祀られるようになりました。この頃から、真言宗の寺院となったとされています。

史実としては、『続日本紀』に天平勝宝8歳（756年）に、土佐を含む26か国の国分寺に仏具等が下賜されたという記述があるため、この年以前には創建されていたと考えられます。また、国分寺周辺は、古代から中世にかけて土佐国の国府の所在地であり、「土佐日記」の作者である紀貫之も国司として4年間この地に滞在しました。国府の中心である国庁は、国分寺から徒歩15分の位置にあり、かつてその近くにあった土佐国総社は、現在、当寺の境内に移されています。

寺は度重なる兵火に見舞われましたが、永禄元年（1558年）には、長宗我部国親、元親によって金堂が再建されました。明暦元年（1655年）には、土佐藩2代藩主の山内忠義が山門を寄進しています。大正11年（1922年）には、境内全域が国の史跡に指定されました。

境内

境内には、歴史的に重要な建造物や文化財が数多く存在します。

山門：入母屋造の楼門で、金剛力士（仁王）像が安置されています。明暦元年（1655年）に建立されました。
金堂（本堂）：国の重要文化財に指定されており、永禄元年（1558年）に長宗我部元親によって再建されました。2014年には屋根が葺き替えられています。
大師堂：寛永11年（1634年）に建立され、1960年の修理で杮葺きから銅板葺きに改められました。2020年には、弘法大師諡号贈1100年記念として、毎月21日に厨子が開扉されました。
開山堂：行基菩薩を祀るお堂です。建立年は不明ですが、嘉永2年（1849年）に改築され、2024年1月に再度改築されました。
鐘楼：建立年は不明ですが、寛永11年（1634年）に最初の改築が行われています。
酒断地蔵尊：お酒を断つことを祈願する地蔵尊です。
中門：境内の中央に位置する門です。
光明殿：平成7年（1995年）11月に竣工した建物で、正面が回向堂、右側が祈願堂となっています。
客殿：昭和53年（1978年）2月に竣工した建物で、慶安3年（1650年）に山内忠義によって閣殿として建立された建物を取り壊して建てられました。
庭園：創建当時の塔心礎を主石とする杉苔の庭園が広がります。
句碑・歌碑：境内には、高木晴子、朝吹磯子、高浜年尾、稲畑汀子などの句碑・歌碑が点在しています。また、山門左の駐車場には国分梵鐘会の21句碑があります。

境内を巡ると、山門の先に手水場と鐘楼、左手には開山堂、正面奥には本堂、左手には大師堂があります。大師堂の前には酒断地蔵があり、鐘楼の先を右に進むと中門、その先に光明殿、左手には庫裏と納経所があります。

その他

宿坊：なし
駐車場：45台、大型7台。無料。
お寺カフェ：9時～16時半、抹茶セット500円、拝観500円（行事等で臨時休業あり）。

文化財

重要文化財（国指定）

金堂（本堂）：1904年（明治37年）8月29日指定。永禄元年（1558年）再建の、杮葺き、寄棟造の美しい建物です。創建時の雰囲気を良く伝えています。
木造薬師如来立像：明治44年（1911年）4月17日指定。平安時代中期作の檜材一木彫で、像高99.6cmです。
木造薬師如来立像：大正2年（1993年）8月20日指定。鎌倉時代作で、寄木造、漆箔、玉眼で、光背に応永23年（1416年）の修理銘があります。像高は35.1cmです。
梵鐘：昭和31年（1956年）6月28日指定。平安時代前期作で、高知県では最古の梵鐘です。口径47.2cm、高さ80.6cm、重量225kg。

史跡（国指定）

土佐国分寺跡：大正11年（1922年）10月12日指定。奈良時代に創建された国分僧寺の跡で、寺域の境界となる土塁や基壇状の土壇が残っています。発掘調査の結果、創建当時の寺域は約21,775平方メートルであったことが判明しています。現金堂が建つ場所には、創建当時にも金堂が存在し、7間×4間または5間×4間の規模であったと推定されています。

高知県指定保護有形文化財

本堂の厨子・須弥壇：平成9年（1997年）5月6日指定。
絹本著色両界曼陀羅：室町時代作、平成9年（1997年）5月6日指定。

南国市指定有形文化財

板絵両界光明真言曼荼羅 2枚：平成9年（1997年）2月19日指定。
海獣葡萄鏡・常滑焼甕 2個：平成18年（2006年）2月21日指定、県立歴史民俗資料館に寄託。

年中行事

十七夜祭・国分寺大祭（2月）
別院大聖寺大祭（11月）

交通アクセス

鉄道：JR四国土讃線後免駅下車、徒歩約3km。
バス：南国市コミュニティバス「国分寺通」下車、徒歩約0.5km。
道路：高知県道45号線、国道32号線沿い。高知自動車道南国ICから約2.6km。

奥の院

土佐国分寺の奥の院である毘沙門堂は、空海が巡錫中に訪れ、毘沙門天像を刻んで安置したことが始まりとされています。毘沙門堂周辺には「毘沙門の滝」があり、南国市指定の名勝となっています。この滝は落差30メートルで、滝の途中には「龍の駒の足跡」と呼ばれる窪みがあります。

前後の札所

四国八十八箇所霊場において、土佐国分寺は、第28番札所の大日寺と第30番札所の善楽寺の間に位置しています。

周辺の関連遺跡

土佐国総社（国分総社神社）：土佐国の21社をまとめた神社で、国分寺の南西に隣接しています。
土佐国分尼寺跡（比江廃寺塔跡）：国分寺の北東約2kmに位置する史跡で、土佐国の国分尼寺の候補地の一つです。
土佐国府跡（土佐国衙跡）：土佐国の役所があった場所の跡です。
土佐国司館（紀貫之邸跡）：紀貫之が国司として滞在したとされる場所です。
* 地蔵渡し：かつて国分橋が架けられるまで人々が渡っていた場所で、土佐国分寺から大日寺方向に約300mの場所にあります。

土佐国分寺は、歴史と文化を感じられる魅力的な場所です。ぜひ一度訪れてみてください。

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