土屋寅直

土屋寅直は、文政3年（1820年）に常陸土浦藩の第9代藩主である土屋彦直の長男として生まれました。天保8年（1837年）には従五位下・采女正に叙任され、翌年には父の隠居により家督を継ぎ、第10代藩主となりました。

幕府では、天保14年（1843年）に奏者番に任じられ、嘉永元年（1848年）には寺社奉行見習、後に寺社奉行に昇進しました。さらに、嘉永3年（1850年）には大坂城代に任じられましたが、安政5年（1858年）に退任しています。その後、元治元年（1864年）には再び奏者番兼寺社奉行に就任しましたが、慶応4年（1868年）に辞任しました。

幕末の動乱期には、水戸藩主徳川斉昭の従弟という立場から、安政5年（1858年）の大坂・兵庫開港に反対しました。また、水戸藩で起こった天狗党の乱では、その鎮圧に消極的な姿勢を示すなど、佐幕派と討幕派の間で苦悩する姿が見られました。

藩政においては、財政再建のために倹約令を出し、家臣の知行借上げや特産物の専売化などを実施しました。さらに、人材登用や郡制改革、学問の奨励など、水戸藩の斉昭に倣った藩政改革を積極的に行いました。

慶応4年（1868年）には、新政府の命令により謹慎処分を受けましたが、後に新政府に恭順し、江戸城警備にあたりました。同年5月6日には、養子の土屋挙直（徳川斉昭の十七男）に家督を譲り隠居しました。明治28年（1895年）に76歳で亡くなっています。


系譜

父: 土屋彦直
母: 充子（土屋寛直の養女、土屋英直の娘）
正室: 竹子（有馬頼徳の娘）

子女:
土屋多仁丸
土屋質直
土屋養直
青山忠誠正室
養子:
土屋挙直（徳川斉昭の十七男）


栄典

* 1895年（明治28年）11月29日 - 正三位


土屋寅直は、幕末という激動の時代に、藩主として、また幕府の要職を歴任した人物です。水戸藩との関係や、佐幕・討幕の両勢力の間で苦悩しながらも、藩政改革に尽力したその生涯は、当時の社会情勢を考える上で重要な事例の一つと言えるでしょう。

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