在日ロシア人

在日ロシア人

在日ロシア人とは、日本に居住するロシア国籍の人々を指します。この中には、長期滞在者だけでなく、過去に亡命した白系ロシア人、日本に帰化した人々、そしてその子孫も含まれます。この記事では、彼らの歴史、統計、そして社会での活躍について詳しく解説します。

概要

日本におけるロシア人の定住は、1854年の函館ハリストス正教会の建設に先駆けて始まりました。日露戦争後、南樺太が日本に割譲された際、残留を選んだロシア人もいました。1917年のロシア革命後には、多くの白系ロシア人が亡命し、1918年には7,251人に達しましたが、偏見などから1936年には1,294人に激減しました。第二次世界大戦の影響で、多くがオーストラリアやアメリカに移住、またはソ連に帰国し、日本に残ったのはごく少数でした。冷戦時代には在日ロシア人の数は増えませんでしたが、ペレストロイカ以降、来日者は増加しました。しかし、他の国々と比較すると、日本への移住者は依然として少ない状況です。

在日ロシア人の子弟向けの教育機関は限られており、E.K.LINGUADAR（東京ロシア語・文学・文化学園）以外はボランティア団体が中心です。1995年には来日ロシア人研究会が設立され、21年間活動しました。

統計

2015年末の統計では、在日ロシア人は8,092人で、東アジアでは韓国、中国に次いで3番目に多いです。女性が5,599人と男性の2,493人を大きく上回り、30代から40代が中心です。在留資格別では、永住者が3,453人と最も多く、次いで日本人の配偶者等、家族滞在、人文知識・国際業務、留学、定住者の順です。以前多かった興行ビザによる滞在は大幅に減少しています。
都道府県別では、東京都が2,389人と最も多く、次いで神奈川県、千葉県、北海道、富山県、大阪府となっています。

北方領土のロシア人

2016年時点で、国後島に7,914人、択捉島に5,934人、色丹島に2,820人、合計16,668人のロシア人が居住しています。主な町としては、ユジノクリリスク、ゴリャチエ・クリュチ、マロクリリスクなどが挙げられます。

歴史

ロシア革命時の日本への亡命者

ロシア革命後、多くの旧ロシア帝国国民が日本に亡命しました。その中には、ロシア人だけでなく、ポーランド人やウクライナ人も含まれていましたが、ロシア語を用いることが多かったため、日本では「ロシア人」と認識されました。1918年には7,251人が日本に到着しましたが、その後、多くが他国へ移住しました。ロシア帝国最後の在日代理大使であったアブリコソフは、日ソ国交回復後も日本に残り、白系ロシア人のまとめ役として活動しました。

初期のプロ野球で活躍したスタルヒンや、神戸の老舗洋菓子店「モロゾフ」の創業者一族、そして「ゴンチャロフ」の創業者マカロフ・ゴンチャロフも白系ロシア人でした。彼らは日本の文化や経済に大きな影響を与えました。また、日本正教会には多くの亡命者が所属し、現在もそのコミュニティは維持されています。

ソ連時代の移住者

1925年の日ソ基本条約締結後、両国間の交流は制限されました。ソ連からの出国は外交官や貿易関係者に限られ、日本に在住するロシア人の大半は依然として白系ロシア人でした。彼らは南樺太や満州に多く住んでいましたが、第二次世界大戦中に監視や拘留の対象となりました。1945年8月のソ連対日参戦により、多くのロシア人がソ連領へ連行されました。日本への脱出に成功した人々は北海道に居住し、その後東京に移住した人もいます。

広島原爆では、11人の白系ロシア人が被爆し、3人が亡くなりました。一方、国内の在日ロシア人は抑留対象となりましたが、終戦後は戦勝国民となり、立場が改善しました。ソ連は戦勝国として極東委員会に参加しましたが、日本への影響力は限定的でした。1952年のサンフランシスコ平和条約発効により、日ソ間の公式関係は途絶えました。1956年に国交が回復しましたが、北方領土問題などで関係は冷え込み、冷戦下では両国は互いを警戒しました。ソ連からは大使館員や報道関係者が居住しましたが、スパイ活動も行われました。文化交流は進みましたが、ソ連国民が日本人と結婚すると冷遇されることもありました。

ソ連崩壊後の移住者

1980年代後半のペレストロイカからソ連崩壊により、日本と旧ソ連間の交流は大幅に拡大しました。在留人数は1990年の340人から、2009年にはロシアだけで7,814人、旧ソ連全体で11,506人に増加しました。特に北海道や日本海側でロシア人との交流が進み、キリル文字の標識や商店も増えました。

学術分野では、横浜市立大学にブラギンスキーが助教授として着任し、経済分野では中古車輸出などで多くのロシア人商人が滞在しました。また、ロシア人女性が接客する「ロシアンパブ」も流行しましたが、犯罪が増加したため、入国管理が強化されました。

スポーツ分野では、体操のアンドリアノフや、ボクシングのアルバチャコフとナザロフ、大相撲の露鵬や白露山などが活躍しました。しかし、大相撲界ではロシア人力士の大麻問題も発生しました。2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、両国間の交流は制限されましたが、ロシアから日本への移住は欧州と比較すると限定的です。

在日ロシア人、ロシア系日本人、およびその子孫の一覧

非日本国籍

阿夢露光大：大相撲力士
阿覧欧虎：大相撲力士（引退）
中庭アレクサンドラ：モデル、タレント
アレクサンドル・ヴァンノフスキー
アレクサンドル・モギレフスキー
アンドロニク・ニコリスキイ：主教
ヴァレンティン・フョドロヴィチ・モロゾフ
ヴィクトル・スタルヒン：プロ野球選手
エフゲニー・アクショーノフ：医師
エマヌエル・メッテル：指揮者
Origa：歌手
大露羅敏：大相撲力士（引退）
ジェーニャ：声優・タレント
府主教セルギイ：聖職者
小原ブラス：タレント
ニコライ・カサートキン：日本正教会の創建者・聖人
野村タチアーナ：大学講師
白露山佑太：大相撲力士（解雇後帰国）
フョドル・モロゾフ：モロゾフ洋菓子店・コスモポリタン製菓創業者
マカール・ゴンチャロフ：ゴンチャロフ製菓創業者
マルキャン・ボリシコ：大鵬の父
ミハエル・コーガン：タイトー創業者
ユーリ・アルバチャコフ：元ボクシング選手
レオニード・クロイツァー：ピアニスト
露鵬幸生：大相撲力士（解雇後帰国）
若ノ鵬寿則：大相撲力士（解雇後帰国）
ワルワーラ・ブブノワ：美術家
レオ・シロタ：ピアニスト

日本国籍

愛衣：グラビアアイドル
姉川ローザ
石井ターニャ：ジャーナリスト
入江美樹：女優
上村けい：AV女優
エリアナ・パヴロヴァ：バレリーナ
オリガ・パヴロヴァ：バレリーナ
大泉黒石：ロシア文学者
大泉滉：俳優
大久保清：殺人犯
太田莉菜：ファッションモデル
小澤征悦：俳優
小澤征良：作家
小野アンナ：ヴァイオリニスト
川村カオリ：ミュージシャン
筧美和子：グラビアアイドル
川村忠：俳優
小林恵美：グラビアアイドル
坂本美雨：ミュージシャン
桜沢菜々子：AV女優
ジョニー野村：プロデューサー
イッペイ・シノヅカ：サッカー選手
須貝昇：プロゴルファー
大鵬幸喜：大相撲力士
高橋靖子：スタイリスト
滝沢カレン：ファッションモデル
武谷ピニロピ：医師
田崎由希：AV女優
田中達也：サッカー選手
田中真理：女優
多良アンナ：ファッションモデル
丹治純：大相撲力士
筑紫美主子：座長
ナターシャ・スタルヒン：栄養士
野村祐人：俳優
橋本晋一
東山紀之：タレント
日野龍樹：フィギュアスケート選手
兵頭ニーナ：ミュージシャン
蟇目良：俳優
ビクトル古賀：サンボ連盟設立者
ベッシャー・アルセニ
布袋寅泰：ミュージシャン
村重杏奈：アイドル
矢野顕子：ミュージシャン
優木まおみ：タレント
結城モイラ：占い研究家
ロイ・ジェームス：俳優
ローラ：タレント
DJふぉい：歌手

関連項目

白系ロシア人
日系ロシア人
日本のユダヤ人
日本のタタール人
ウクライナ人
ベラルーシ人
日本ハリストス正教会
在日トルコ人
在日ウクライナ人
在日ウズベキスタン人
残留ロシア人 (南樺太)
名探偵コナン 世紀末の魔術師

外部リンク

白系ロシア人と近代日本文化
バレンタインの日のチョコレート
日本における白系ロシア人史の断章
ロシア人ディアスポラ

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