地球のトロヤ群とは？意味をやさしく解説

地球のトロヤ群とは

地球のトロヤ群とは、地球と太陽が共通の公転軌道を周回し、地球-太陽系のラグランジュ点、特にL4（地球の前方60度）とL5（地球の後方60度）の近傍に位置する小惑星のグループを指します。この名称は、木星のラグランジュ点に存在する「木星のトロヤ群」にちなんで名付けられました。

地球から観測すると、これらの小惑星は太陽から平均して東または西に60度離れた空に見えます。

発見された地球のトロヤ群小惑星

2011年、カナダのアサバスカ大学の研究チームが広域赤外線探査衛星WISEを用いて、直径約400メートルの小惑星「2010 TK7」が地球のL4点に存在することを確認しました。これが初めて確認された地球のトロヤ群小惑星です。

その後、2022年には、「(614689) 2020 XL5」が2番目の地球のトロヤ群小惑星として確認されました。2022年2月現在、確認されている地球のトロヤ群小惑星はこの2つのみです。

確認されている事例

L4点
2010 TK7
(614689) 2020 XL5
L5点
2023年11月時点で未発見

地球のトロヤ群の重要性と探査

地球のトロヤ群に属する小惑星は、地球から見て月よりも遥かに遠い場所にありますが、地球からの到達が比較的容易であると考えられています。このため、将来的に地球表面には少ない元素の供給源として利用できる可能性があります。

地球では、イリジウムのような親鉄性元素は惑星形成の初期段階で核に沈み込んでしまい、地表では発見が困難です。一方、小さな小惑星は、地球と組成が似ていても熱を早く失って固化しているため、これらの元素の貴重な供給源になる可能性があります。また、小惑星の重力が弱いため、重い元素と軽い元素の分離が起こりにくいという特徴もあります。例えば、2010 TK7程度の質量の天体では、その重力は地球の約0.005%程度です。

しかし、地球のトロヤ群小惑星の地上からの光学観測は、太陽光が強いため困難です。

アメリカ航空宇宙局（NASA）は、小惑星ベンヌへ向かっていた探査機オサイリス・レックスの追加ミッションで地球のL4点付近の観測を試みましたが、新しいトロヤ群小惑星を発見することはできませんでした。

また、宇宙航空研究開発機構（JAXA）の探査機はやぶさ2も、小惑星リュウグウへ向かう途中で地球のL5点付近の観測を行いましたが、直径100メートル程度の小惑星を発見するには至りませんでした。

地球のその他の伴星

地球には、トロヤ群以外にも伴星が存在します。その一つが、馬蹄形軌道と呼ばれる共鳴軌道上にある小惑星「クルースン」です。この天体は、一時的にこの位置にいると考えられており、同様の軌道を持つ小さな天体もいくつか発見されています。これらの天体は1:1の共鳴軌道上にありますが、L4とL5のラグランジュ点付近で秤動していないため、地球のトロヤ群には分類されません。

出典

参考文献

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