地球の地殻

地殻 (Crust)

地球の地殻（ちきゅうのちかく、英: Earth's crust）は、私たち惑星地球の最も外側を覆う硬い岩石質の層です。その厚みは地球の半径に比べて非常に薄く、地球全体の体積のわずか1パーセントにも満たない部分を占めているにすぎません。地殻は、その直下にある上部マントルの一部とともに、「リソスフェア」と呼ばれる硬い層を形成しています。このリソスフェアは巨大な岩盤であるプレートに分かれており、これらのプレートの動きが地球内部の熱を宇宙空間へと放出する上で重要な働きをしています。

マントルとの関係

地殻は、主に橄欖岩（かんらんがん）からなるその下のマントルよりも著しく密度が低いため、マントルの上に比較的安定した層として存在しています。地殻とマントルの境界は、地震波の伝わる速度が急激に変化する面として定義されており、「モホロビチッチ不連続面」（通称：モホ面）と呼ばれています。
地殻内部の温度は、深さが深くなるにつれて上昇します。マントルとの境界付近では、一般的に約100°Cから600°Cの範囲に達するとされています。特に地殻の浅い部分では、場所によっては深さが1キロメートル増すごとに温度が30°Cも上昇することもあります。

種類と組成

地球の地殻は、その特性によって大きく二つの種類に分けられます。

海洋地殻

主に海洋底の下に存在する地殻で、厚さは一般的に5キロメートルから10キロメートル程度です。これは大陸地殻に比べてかなり薄い層です。海洋地殻は、玄武岩（げんぶがん）、輝緑岩（きりょくがん）、斑れい岩（はんれいがん）といった、鉄やマグネシウムを多く含む密度の高い「苦鉄質岩（くてつしつがん）」を主成分としています。典型的な構造としては、最上部に薄い堆積物があり、その下に海嶺で形成される枕状溶岩や層状岩脈からなる玄武岩層、さらにその下に斑れい岩の層が重なっています。

大陸地殻

主に大陸の下に存在する地殻で、厚さは30キロメートルから50キロメートルと海洋地殻よりはるかに厚いです。大陸地殻は、花崗岩（かこうがん）など、シリカやアルミニウムを多く含む密度の低い「珪長質岩（けいちょうしつがん）」を主成分としています。大陸地殻の組成は深さによって変化し、上部はデイサイトに似た珪長質、下部は玄武岩に似た苦鉄質の傾向があります。大陸地殻には、下にあるマントルと比べて不適合元素と呼ばれる特定の元素が非常に豊富に含まれているという特徴があります。平均的な密度については、上部大陸地殻で2.69-2.74 g/cm3、下部大陸地殻で3.0-3.25 g/cm3と推定されています。

浮力と地形

海洋地殻も大陸地殻も、どちらもその下のマントルよりも密度が低いため、マントルの上に文字通り「浮かんでいる」状態にあります。この現象はアイソスタシーと呼ばれます。
大陸地殻は、海洋地殻よりも厚く、また平均密度も低いため、マントルからの浮力がより大きくなります。この浮力の差が、地球表面の大きな地形構造を生み出しています。大陸地殻の表面は海洋地殻の表面よりも有意に高い位置にあり、これが陸地が高地を形成し、その周囲を深海盆が取り囲むという、地球表面の基本的な景観を作り出しているのです。

形成と進化

地球は約46億年前に、太陽の周りを回っていたガスと塵が集まって形成されました。この原始地球は大量の熱を帯び、表面はマグマオーシャンと呼ばれる溶融した状態でした。冷却が進むにつれて、最初の固体地殻、すなわち一次地殻（原始地殻）が形成されたと考えられています。しかし、その後の巨大な天体衝突などにより、この最初の地殻は繰り返し破壊され、マグマオーシャンから再び形成された可能性があります。現在の地球上に、当時の原始地殻は一切残っていません。数十億年の間に、侵食、衝突、そして活発なプレートテクトニクスの活動によって完全に失われたのです。

その後、地球では二次地殻（海洋地殻）と三次地殻（大陸地殻）が形成されるようになりました。

海洋地殻の形成

二次地殻である海洋地殻は、主に「中央海嶺」と呼ばれる海底山脈で形成されます。ここでは、マントル物質が上昇して部分的に溶け、玄武岩質のマグマとなります。このマグマが冷え固まることで新しい海洋地殻が絶えず生み出されています。新しい海洋地殻は中央海嶺から両側に広がっていき、このプロセスがプレートテクトニクスの主要な駆動力の一つとなっています。一方、古い海洋地殻は、「沈み込み帯」と呼ばれる海溝でマントル内部へと沈み込んでいきます。このように海洋地殻は絶えず生成と破壊を繰り返しているため、現在存在する海洋地殻の中で最も古いものでも、その年代は約2億年前のものにすぎません。

大陸地殻の形成

対照的に、三次地殻である大陸地殻は、その大部分が海洋地殻よりもはるかに古い年代を持っています。地球上で確認されている最も古い大陸地殻の岩石は約37億年から42.8億年前のもので、西オーストラリア州やカナダなど一部の地域で見つかっています。大陸地殻は、主に沈み込み帯において、沈み込んだ海洋地殻やその上の堆積物が再び溶融し、マグマとなって上昇・固結することで形成されたと考えられています。これは「二次地殻の再生」とも言えるプロセスです。大陸地殻の平均年齢は約20億年と推定されており、特に25億年以上前の古い部分は「クラトン」と呼ばれる安定した地塊として存在しています。これらのクラトンは、下にあるマントルの一部を含めて周囲よりも密度が低く浮力が大きいため、プレートの沈み込みによって容易に破壊されることなく、長い地質学的時間を経て安定して存在し続けています。新たな大陸地殻の形成は、ロディニアやパンゲアといった超大陸の形成と関連するなど、過去の激しい造山運動の時期に活発であったと考えられています。

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