坂下門外の変

坂下門外の変

坂下門外の変（さかしたもんがいのへん）とは、1862年1月15日（文久2年1月15日）に江戸城の坂下門外で発生した襲撃事件であり、尊攘派の水戸浪士6人が老中安藤信正を襲撃しました。この事件は幕末期の政治的緊張を象徴する重要な出来事として位置付けられています。

背景

坂下門外の変は、桜田門外の変によって大老・井伊直弼が暗殺された後の混乱の中で起こりました。安藤信正は、老中の久世広周と共に幕閣を主導し、井伊直弼の開国路線を継いで国家の威信を回復しようと試みました。この一環として、幕府は和宮の降嫁を決定しましたが、これに対して尊王攘夷派の志士たちは強い反発を示し、安藤信正に対する憤怒を抱きました。

万延元年（1860年）7月には、水戸藩と長州藩の志士たちが協力する約束を交わし、信正の暗殺や外国人への襲撃を計画しました。しかし、長州藩内の意見の相違により、参加が難しくなりました。水戸側は計画を続けることを選び、宇都宮の儒学者たちとの連携を深めていきました。

計画の進行

水戸藩士を中心に、宇都宮藩の儒者・大橋訥庵が計画の中核を担い、安藤を襲撃するための具体的なプランを練りました。大橋は王政復古論者として幕府打倒を目指しており、作成された斬奸趣意書も彼が執筆したとされます。大橋の周囲には、連絡を取り合った商人や医師たちも参加し、襲撃の準備が着々と進められました。

決行

襲撃は、1862年1月15日午前8時頃に決行されました。この日、安藤信正の行列が坂下門外に差し掛かると、水戸藩浪士のメンバーが行列に突入しました。最初に河本杜太郎が銃声を響かせ、その音を合図に他の浪士も襲撃を開始しました。最終的には、信正は軽傷を負いましたが、老中の数多くの警護員の前に、浪士たちは次々と攻撃され、全員が戦死する結果となりました。

流れ弾により信正の小姓が負傷し、警備側でも十数人が怪我をしましたが、大きな死者は出ませんでした。遅れた川辺は最後に斬奸趣意書を長州藩邸に届けた後、自決しました。

影響

この襲撃事件は幕末の政治的風潮に多大な影響を与えました。信正は襲撃に失敗したものの、幕府の権威は一層失墜し、彼はその後、老中を罷免され、隠居を命じられました。また、幕末の戊辰戦争においては再び増転封の憂き目にあうことになります。

この事件は、幕末の動乱が加速していく一因となり、以降も日本の歴史に深く刻まれた重要な出来事となりました。

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