坂口仁一郎

坂口仁一郎：越後の地が生んだ多才な人物

坂口仁一郎（さかぐち にいちろう）は、安政6年（1859年）に越後国で生まれ、大正12年（1923年）に没した政治家、漢詩人、実業家です。衆議院議員を8期務め、新潟新聞の社長や新潟米穀取引所の理事も歴任しました。また、漢詩人としては阪口五峰（さかぐち ごほう）のペンネームを用い、多くの作品を残しています。作家・坂口安吾の父としても知られています。

生い立ちと初期の活動

坂口仁一郎は、越後国中蒲原郡阿賀浦村（現在の新潟県新潟市）で、地主である父・得七の長男として生まれました。幼少期から漢学や詩作を学び、15歳で家督を相続。その後、東京で洋学を学ぶ機会を得ましたが、父に連れ戻され、新潟に戻ります。新潟では、地租改正に伴う地券の策定に携わり、新潟米商会所（後の新潟米穀取引所）の創設を支援しました。

実業家、政治家としての活躍

明治12年（1879年）には、新潟米穀取引所の頭取代理、肝煎となり、45年間勤務し理事長を務めました。明治17年（1884年）からは、新潟県会議員として17年間活動し、議長も経験しました。また、新潟新聞の経営にも携わり、社長として新聞社の発展に貢献しました。

明治35年（1902年）には、衆議院議員に初当選し、8期を務めました。その間、憲政会党務委員長や県支部長などを歴任し、政治家として活躍しました。また、満鮮戦地視察にも赴いています。

詩人としての側面

坂口仁一郎は、漢詩人としても才能を発揮しました。森春濤の門下生に勧められ、『新文詩』に作品が掲載されたことをきっかけに、詩人としての活動を本格化させました。晩年には、国史を論じる詠史詩を多く残しています。また、『北越詩話』を刊行し、越後出身者など900人の3500首の詩文を収録しました。

多趣味な一面

坂口仁一郎は、印の収集を趣味としていました。市島謙吉から高芙蓉刻の鶏血石の印を譲り受ける際には、七言三十四句の大作「鶏血石歌贈市島春城」を贈っています。この作品は、寺崎広業が画を描き、浜村蔵六が筆を添え、新潟県立図書館に所蔵されています。

晩年

大正9年（1920年）に病に倒れ、胃癌と診断されました。大正12年（1923年）11月、在職中に細胞肉腫、後腹膜腫瘍により死去。享年64歳でした。墓所は大安寺の坂口家墓所にあります。

家族

坂口仁一郎は、玉井波磨子と吉田朝子の2人と結婚し、多くの子をもうけました。長男の坂口献吉はラジオ新潟の社長、五男の坂口安吾は小説家として知られています。

坂口仁一郎は、政治家、実業家、詩人として多岐にわたる分野で才能を発揮し、越後の文化の発展に貢献しました。その功績は、今もなお語り継がれています。

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