城主大名

城主大名とは

江戸時代の大名は、その格式や領地の状況によっていくつかの階級に分けられていました。その中で「城主大名」とは、国許の領地に城を持つことを許された大名のことを指します。これは、大名家を居地や居城で区別する際の格式の一つで、国主（国持大名）、準国主、城主、城主格、無城（陣屋）という5つの階級のうち、上から3番目に位置づけられています。

城主大名として認められるためには、単に城を所有しているだけでなく、幕府によって正式にその城の保持を認められている必要がありました。城は単なる住居ではなく、その大名の権威を示す象徴であり、領国を統治するための重要な拠点でもあったため、幕府は城の建設や維持に関して厳しく統制していました。

城主大名の城

城主大名の居城は、単なる屋敷とは異なり、石垣の上に塀や櫓を備えた堅固な構造物でした。これは、徳川幕藩体制下における城の定義にも合致しており、城主は、櫓・塀・門などの修繕については幕府に届け出て許可を得ることで行うことができましたが、石塁・石壁の破損については、奉行に報告し、その指示を受ける必要がありました。

城主大名の領地における居城は、その大名の権威と支配を示す上で重要な役割を果たしていました。城主大名には、居城を中心に領地を統治し、幕府の命令に従う義務が課せられていました。

城主格大名とは

「城主格大名」とは、国許の屋敷が陣屋である大名のうち、城主に準ずる待遇を受ける大名のことを指します。これは、一国一城令によって主城以外の城が破却された後、新しく取り立てられたり、分知によって独立した大名が増加し、与えるべき城地が不足したために生まれた制度です。

城主格大名は、城を持つことは許されませんでしたが、長年若年寄を務めた家や、旧家・名族など、特別な家柄や功績を持つ大名が選ばれました。幕末の慶応3年（1867年）には、19家が城主格大名として存在していました。

城主格大名の待遇

城主格大名は、城を持つことは許されないものの、その待遇は城主大名に準ずるものでした。例えば、城門の構築が許されたり、公式な場では城主大名に準じた扱いを受けました。しかし、領地の居地を表す用語は、城主大名の「居城」ではなく、無城大名と同様の「在所」という表現が用いられていました。

これは、城主格大名が、あくまでも城を持たない大名であり、城主大名とは明確に区別されていたことを示しています。城主格大名は、城を持つことができなかったものの、その格式や待遇において、幕府から一定の評価を受けていたと言えるでしょう。

城主格大名の例

以下に、主な城主格大名と、その変遷を例として挙げます。

井伊家：安中藩（城主）→西尾藩（城主）→掛川藩（城主）→与板藩（城主格）
板倉家：下野内（無城）→泉藩（城主格）→相良藩（城主格）→安中藩（城主）
岩城家：亀田藩（無城→城主格）
遠藤家：郡上藩（無城→城主格→城主）→常陸下野内（無城）→三上藩（城主格）
織田家：小幡藩（無城/国主格）→高畠藩（城主格）→天童藩（城主格）
柳本藩：柳本藩（無城→城主格）
九鬼家：鳥羽藩（城主）→三田藩（城主格）
黒田家：秋月藩（城主格）
酒井家：敦賀藩（無城→城主格）
田村家：岩沼藩（無城）→一関藩（無城→城主格）
藤堂家：久居藩（無城→城主格）
内藤家：泉藩（城主格）→安中藩（城主）→挙母藩（城主）
赤松家：赤松藩（無城）→岩村田藩（無城→城主格）
南部家：八戸藩（無城→城主格）
南部家：盛岡新田藩→七戸藩（無城→城主格）
堀家：村松藩（城主格）
本多家：浅川藩（無城）→伊保藩（無城）→相良藩（無城）→泉藩（城主格）
奥平松平家：白河新田藩（無城）→桑折藩（無城）→篠塚藩（無城）→上里見藩（無城）→小幡藩（城主格）
越前松平家：広瀬藩（無城→城主格）
松前家：福山藩（蝦夷嶋主（客臣格）→交代寄合→無城）→ 梁川藩（無城）→福山藩（無城→城主格）
水野家：北条藩（無城→城主格）→鶴牧藩（城主格）
毛利家：徳山藩（無城→城主格）
* 毛利家：長府藩（城主→無城→城主格）

これらの例からもわかるように、城主格大名は、必ずしも固定的な身分ではなく、その家柄や功績、時代の状況などによって、城主大名になったり、城主格にとどまったり、あるいは無城大名に戻ったりすることがありました。

まとめ

城主大名と城主格大名は、江戸時代の大名制度における重要な要素でした。城を持つことの意味、そして、城を持たないがゆえの待遇。この二つの異なる身分を通して、江戸時代の大名社会の一端を垣間見ることができます。

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