城南宮

城南宮（じょうなんぐう）

京都市伏見区に鎮座する城南宮は、古くより「方除（ほうよ）の大社」として篤い信仰を集める神社です。旧社格は府社にあたります。

御祭神

主祭神として、城南大神（じょうなんおおかみ）を祀ります。これは、八千矛神（やちほこのかみ、大国主神）、息長帯日売尊（おきながたらしひめのみこと、神功皇后）、国常立尊（くにのとこたちのみこと）の三柱の神々を合わせた御神号です。

歴史

城南宮の創建時期は明確ではありませんが、平安京への遷都が行われた際に、国常立尊をそれ以前からこの地に祀られていた八千矛神と息長帯日売尊に合祀して創建されたと伝えられています。平安京の南に位置することから、「城南神」と称されたのが社名の由来とされます。また、一説には、この地にあった城南寺の鎮守として建立されたともいわれています。

平安時代後期、白河天皇が広大な鳥羽離宮（別名：城南離宮）を造営すると、城南宮はその敷地の一部に取り込まれ、離宮の鎮守として代々の天皇や上皇が頻繁に訪れる場所となりました。さらに時代が下ると、都の裏鬼門（南西の方角）を守護する重要な役割を担うようになりました。

歴史上の重要な局面にも深く関わっています。1221年（承久3年）、後鳥羽上皇が鎌倉幕府執権の北条義時打倒を目指し、兵を集結させる口実としてこの地で流鏑馬揃えを行ったことは、承久の乱の幕開けとして知られています。また、この頃に盛んだった熊野三山への参詣において、旅の安全を願う方除けの精進所として立ち寄られるようになり、現在まで続く「方除け」信仰の礎となりました。

室町時代に入ると、この地に鎮座していた式内社である真幡寸神社を境内に取り込んだと考えられています。しかし、応仁の乱をはじめとする度重なる戦乱によって社殿は荒廃しました。

江戸時代になって復興が進み、再び信仰を集めるようになります。幕末の動乱期には、1863年（文久3年）に孝明天皇が攘夷祈願のために行幸され、これを機に年三回の代参と御祈禱が恒例となりました。そして1868年（慶応4年）には、戊辰戦争の緒戦である鳥羽・伏見の戦いの主戦場となり、新政府軍が掲げた錦の御旗の前で旧幕府軍が総崩れとなる舞台となりました。

明治維新後、1877年（明治10年）には式内社「真幡寸神社」に比定され、一時的に社名を「真幡寸神社」と改称し、府社に列せられました。しかし、1968年（昭和43年）に再び社名を「城南宮」に戻し、真幡寸神社はその境内摂社として新たに社殿が設けられ、祀られることとなりました。本殿は1977年（昭和52年）に焼失しましたが、翌1978年（昭和53年）には再建されています。

近年では、転居や旅行の安全祈願、さらには交通安全の神としても信仰が広がり、毎年7月には自動車の茅の輪くぐりが行われています。

境内

境内には、1978年に再建された本殿を中心に、前殿や翼廊、拝殿、神楽殿などが建ち並びます。多くの摂末社も祀られており、稲荷社、厳島社、住吉社、兵主社、粟島社、天満宮社、妙見社、金刀比羅社、庚申社、大国主社、春日社、三照宮社、芹川天満宮（唐渡天満宮）などがあります。手水舎から湧き出る水は「菊水若水」と呼ばれる名水です。

境内の南西側には摂社 真幡寸神社が鎮座しています。真幡寸神社は元々深草の地にあり、神功皇后による創建と伝えられる式内社でした。数度の遷座を経てこの地に移り、一時期は城南宮と一体化しましたが、1968年に改めて摂社として独立した社殿が設けられました。祭神は真幡寸大神と応神天皇です。

神苑「楽水苑」

城南宮の大きな魅力の一つが、昭和を代表する作庭家である中根金作によって作庭された広大な神苑「楽水苑」です。敷地内に「花の庭」「平安の庭」「室町の庭」「桃山の庭」「城南離宮の庭」という趣の異なる五つの庭園が展開されています。

特に「平安の庭」は池泉回遊式庭園となっており、春（4月29日）と秋（11月3日）には、王朝絵巻さながらの「曲水の宴」が催されます。

城南宮鳥居

本殿正面に立つ赤い鳥居は、「城南宮鳥居」という独特の様式を持っています。神明鳥居を基本としつつも、柱の下に饅頭（円形の台座）があり、笠木の上に島木が重なり、さらにその上には屋根が葺かれています。島木の中央には神紋の金具が打ち付けられています。

その他

かつて城南宮に隣接する国道1号上には、城南宮が地元住民や参詣者の安全のために私費で設置・管理していた歩道橋「とわのかけはし」がありましたが、時代の変化と老朽化により2010年に撤去されました。また、城南宮は熊野古道における九十九王子の、京都からの出発点にあたるとされています。

アクセス

近鉄京都線・京都市営地下鉄烏丸線の竹田駅から徒歩約15分です。

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