増田高頼

増田高頼（ますだ たかより）

増田高頼は、慶応四年（1868年）七月二十四日に肥前唐津藩の国家老を務めた増田卓爾の次男として、佐賀の地に生を受けました。昭和四年（1929年）二月十九日に世を去るまでの生涯を、日本の海軍軍人として駆け抜け、最終的に海軍少将まで昇進しました。

海軍への道と初期の経歴

海軍兵学校第18期生として海軍の門を叩いた高頼は、明治二十四年（1891年）に少尉候補生となり練習艦「比叡」に乗組みます。その後、明治二十七年（1894年）に海軍少尉に任官。同年勃発した日清戦争には、「浪速」の分隊士として出征し、軍歴の第一歩を踏み出しました。主に艦艇での勤務を経験した後、明治三十七年（1904年）には海軍少佐に昇進します。

日露戦争と清国での活動

日露戦争のさなか、海軍少佐となった高頼は、連合艦隊が歴史的な勝利を収めた日本海海戦時、大本営海軍部、後の軍令部にあたる作戦班で参謀を務め、戦局の推移を見守り、作戦の立案に関与しました。戦争終結後も海軍でのキャリアを積み、「磐手」「朝日」の砲術長、「武蔵」の副長を歴任。その後、在清国公使館付武官補に任ぜられ、主に天津を拠点として情報収集活動に従事しました。

要職歴任と晩年

明治四十一年（1908年）に海軍中佐へ昇進し、明治四十五年（1912年）に帰朝。第三艦隊参謀に着任しました。大正三年（1914年）には海軍大佐に進級し、「厳島」「日進」「朝日」「安芸」といった主要な艦艇の艦長を歴任。部隊の指揮官としての手腕を発揮しました。大正七年（1918年）には台湾総督府海軍参謀長という重要な役職に就任。そして大正八年（1919年）、海軍少将に昇進すると同時に予備役へ編入されます。その後、大正十三年（1924年）には後備役となりました。晩年は病を得て療養生活を送り、昭和四年（1929年）二月十九日、肺結核のため神奈川県茅ヶ崎市にてその生涯を閉じました。享年60でした。

人物と興味深い逸話

増田家の家紋は隅立て四つ目であり、家系は宇多源氏佐々木氏族六角氏流を汲むとされています。海軍兵学校の2期先輩であり、同じ佐賀出身である小笠原長生海軍中将とは、深い親交がありました。特に清国天津での情報収集活動においては、身分を隠して任務にあたっていましたが、小笠原が軍服姿で高頼を訪ねてきたことで、その正体が露見し、急遽天津を離れることになったという逸話が残されています。葬儀の際には、慣例により天皇陛下から勅使が遣わされましたが、高頼の遺志あるいは遺族の意向により、その弔問を辞退したと伝えられています。日露戦争終結後、記念艦「三笠」（神奈川県横須賀市の三笠公園に保存）の艦内で撮影された参謀部の集合写真には、高頼とともに、後の皇后雅子殿下の曾祖父にあたる江頭安太郎の姿も写っています。海兵18期という高頼の同期には、後にロンドン海軍軍縮会議全権顧問や海軍大臣を務めた安保清種、そして聯合艦隊司令長官や軍令部長を歴任した加藤寛治といった、日本海軍の要人が名を連ねています。

家族にまつわる話もまた独特です。長男、次男が相次いで戦死や病気で亡くなったため、三男の高俊が家督を継ぐはずでした。しかし、高俊は競馬に熱中し家庭を顧みなかったため、高頼は彼を勘当しようとしますが、当時の法律では家督相続人の勘当は認められていませんでした。そこで高頼は、高俊以外の家族全員を書類上で「勘当」し、結果として高俊を増田家から追い出すという、通常では考えられない手段を講じました。また、長年曹洞宗を信仰していた増田家でしたが、妻の葬儀に際して、その場で曹洞宗の僧侶が見つからなかったため、急遽真言宗に改宗したという逸話も伝わります。高頼が亡くなった時、末弟を除く男子は皆結婚して家を出ていたため、末弟が家を継ぎました。海外への赴任に際しては、常に妻と末弟のみを伴っていたと言われています。

栄典

高頼は、その長年の功績に対し、数々の栄典を授与されています。

位階
明治27年（1894年）5月11日 - 正八位
明治31年（1898年）3月21日 - 正七位
勲章
* 明治39年（1906年）4月1日 - 功四級金鵄勲章、旭日小綬章、明治三十七八年従軍記章

兄には弁護士の増田侃、妹には宮島醤油二代目社長宮島徳太郎の妻となった宮島ツルがいます。また、勘当された息子である増田高俊は、戦後初の競馬新聞発行や、株式会社ホースニュースの設立に関わった人物として知られています。

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