士仁

士仁の生涯と評価

士仁（し じん）は中国後漢末期の武将として知られ、彼の具体的な生没年は不明です。士仁の字は君義で、幽州広陽郡の出身です。彼は劉備の配下として、荊州の公安城を守備していましたが、上官である関羽との関係は良好とは言えませんでした。関羽から軽視されていると感じていた士仁は、樊城の戦いで関羽が多くの困難に直面している際、しっかりと支援を行わず、後に叱責を受けることになります。士仁は「関羽に戻ったら処罰されるだろう」と不安を抱くようになりました。

士仁はその後、孫権から内通の誘いを受けました。江陵城で守備を任されていた糜芳と共に、彼はこの誘いに応じ、孫権の軍を迎え入れることになります。この決断は士仁にとって重要なものでしたが、呂蒙の軍が迫ってから降伏したという説も存在します。最初は虞翻からの交渉を拒否していた士仁ですが、虞翻の手紙を読み涙を流し、最終的には降伏を決意しました。

士仁の降伏の後、呂蒙は彼を連行し南郡へ進軍しました。士仁の姿を見た南郡の太守である糜芳もまた降伏することとなりました。糜芳は後に孫権の配下として活動する姿が見られますが、士仁のその後の行動については記録がなく、謎に包まれたままとなります。

裏切り者としての評価

後の蜀漢の史書『楊戯の季漢輔臣賛』では、士仁は裏切り者として厳しく非難されています。彼は「司令官に対し怨みを抱き、大徳を顧みず国を救う功もなく、裏切りを成して逃走し、自ら人に見放され、二国の笑い者になった」との評価が下されるほど、信義に反する行為を行ったと見なされています。

小説における士仁の描写

士仁は、羅貫中の小説『三国志演義』においては、関羽の部下「傅士仁」として登場します。彼は第73回から物語に登場し、使者の費詩をもてなす宴会の中で失火を招き、関羽から厳しい処罰を受けることになります。その後、関羽の命によって公安の守備に就くことになりますが、幼馴染の虞翻に説得され、降伏するという展開が待ち受けます。

物語の中で傅士仁は、糜芳にも降伏を強いる場面も描かれています。夷陵の戦いでは孫権の武将として戦闘に従事しますが、劉備軍の攻撃力に恐れをなし、糜芳と共に討たれ、最終的には関羽の仇である馬忠を処刑した後、劉備に降伏します。しかし、彼は許されることなく斬首される運命を辿ります。吉川英治の小説『三国志』では、傅士仁は劉備ではなく関羽の子息である関興の手によって斬首されることとなります。

士仁の人生は、裏切りや忠誠の葛藤を描いており、その評価は多岐にわたりますが、彼の選択がいかにその後の運命に影響を与えたのかを考えさせられます。

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