壱岐国分寺

壱岐国分寺は、長崎県壱岐市芦辺町に位置する臨済宗大徳寺派の寺院です。山号を護国山と称し、本尊は釈迦如来です。この寺院は、奈良時代に聖武天皇の詔によって日本各地に建立された国分寺の一つ、壱岐島分僧寺の後継寺院にあたります。この記事では、現存する寺院と、古代の寺院跡である壱岐島分寺跡の両方について詳しく解説します。

概要

壱岐国分寺は、壱岐島の中央部に位置し、聖武天皇の詔によって創建された国分寺の法灯を受け継いで再興されました。壱岐島における国分寺は、多くの史料で「島分寺」と記されています。創建当初の島分寺跡は、現在の寺院の北西に位置しており、他の国々と比較して建立が遅れたとされています。

史料や発掘調査によれば、8世紀中葉から後半にかけて、壱岐島の古代豪族である壱岐氏の氏寺として創建され、8世紀後半から末頃に島分寺に転用されました。その後、10世紀末から11世紀初頭頃に衰退し、1[[7世紀]]になって現在地に再興されました。

古代の島分寺跡は、1974年に長崎県指定史跡に指定され、1987年以降発掘調査が行われています。この地域は、壱岐島の古墳が最も密集している場所であり、壱岐古墳群や壱岐氏の居館跡地と推定される国片主神社も存在します。

歴史

創建

国分寺の正確な創建時期は不明です。国分寺建立の詔は天平13年（741年）に出されましたが、『類聚三代格』によると、天平16年（744年）に壱岐島の国分僧尼両寺の造寺用料が肥前国から割り当てられました。しかし、天平勝宝7歳（755年）には壱岐を含む西海道5国の講師が停止され、天平勝宝8歳（756年）には26カ国の国分寺に灌頂幡が頒下された際にもこれらの5国は対象外とされており、当時は寺院の基盤が確立していなかったと考えられます。

『延喜式』玄蕃寮によれば、壱岐氏の氏寺を島分寺とし、僧5口を置いたとされています。整備状況は不明ですが、『弘仁式』までに壱岐氏の氏寺が転用されて成立したと考えられます。他の国分寺では僧20口が置かれていたことと比較すると、壱岐島には他国との格差があったことがわかります。

近年の発掘調査では、8世紀中葉から後半が「氏寺期」、8世紀後半から末頃以降が転用後の「島分寺期」とされています。

古代

弘仁11年（820年）の『弘仁式』主税寮の規定では、壱岐島の国分寺料として2万束があてられており、この頃には寺院が成立していたことが確認できます。承和11年（844年）には、大隅国・薩摩国・壱岐島の2国1島において停止されていた講師が復活しました。

延長5年（927年）に成立した『延喜式』主税寮では、肥前国正税から壱岐島国分寺料1万6,697束があてられていたほか、大宰府管内諸国正税から壱岐島島分寺の法会布施供養料1万2,907束1把1分5毫、筑前国正税から仏餉供料稲1,332束・講師常供4,726束があてられていました。

天禄元年（970年）には、壱岐島分寺領の中浜荘が大宰府の安楽寺に寄進されました。その後の文書では、当寺は安楽寺の末寺とされており、南北朝時代の観応3年（1352年）の文書にも安楽寺末の「島分寺」として見えます。しかし、発掘調査によれば、10世紀末から11世紀初頭頃には寺院の衰退が見られます。

近世

1[[7世紀]]に入ると寺院再興の動きが起こり、『壱岐国続風土記』によれば、寛文2年（1662年）には釈迦堂のみの状態でしたが、平戸藩主の松浦鎮信が白銀100枚を施入し、松浦半左衛門が寺田10石を寄進しました。また、平戸の普門寺から暗宗が招かれて再興開山されました。その後、那賀郷の阿弥陀寺住職の兼帯所となりました。

享保5年（1720年）には平戸藩主の松浦篤信によって京都の大徳寺から興宗が招かれ、請待開山されました。享保8年（1723年）には、安国寺末の阿弥陀寺など6寺が国分寺末とされました。

元文3年（1738年）には、那賀郷域内で阿弥陀寺が国分寺とされ（現在の護国山国分寺）、国分寺跡には小堂が建てられて阿弥陀寺となりました（寺号の交代）。宝暦-明和年間（1751-1442年）には伽藍修築が行われ、寛政10年（1795年）には寺領新田高30石でした。

近代以降

1974年7月2日、島分寺跡が「壱岐国分寺跡」として長崎県指定史跡に指定されました。1987年から1993年にかけて第1-7次発掘調査が行われ、2012年から2013年には範囲確認の発掘調査が実施されました。

壱岐島分寺跡

僧寺跡は、現在の国分寺の北西に位置しています。壱岐氏の氏寺を母体としたことや、地形的に寺域が狭いことなどから、他国とは異なる伽藍配置を採用しています。

推定される寺域からは、7世紀末頃の須恵器がわずかに検出されています。8世紀中葉から後半には、金堂跡・塔跡・塀跡・門跡と推定される版築基壇の建物跡が検出されており、これらは「氏寺期」に比定されます。8世紀後半から末頃には回廊跡が新造され、以降10世紀末から11世紀初頭頃までが「島分寺期」とされています。しかし、現在認められる礎石はいずれも原位置を保っていないため、建物の詳細は明らかではありません。

寺域からの出土品としては、瓦のほか、須恵器・土師器・製塩土器・滑石製品・輸入陶磁器などがあります。「氏寺期」の瓦には、大宰府系ではなく平城系のものが認められ、壱岐氏と畿内との密接な結びつきを示唆しています。江戸時代には約60個あったとされる礎石は、現在では10数個しか確認されていません。

文化財

長崎県指定文化財

史跡
壱岐国分寺跡 - 1974年7月2日指定

壱岐市指定文化財

有形文化財
木造弘法大師坐像 - 室町時代の作で、大永8年（1528年）の修理銘を持つ。寄木造で、像高37.9センチメートル。1974年12月2日指定

現地情報

所在地

島分寺跡（国分寺跡）：長崎県壱岐市芦辺町国分本村触
現国分寺：長崎県壱岐市芦辺町中野郷西触

交通アクセス

島分寺跡：壱岐交通バスで「国分寺」バス停下車
現国分寺：壱岐交通バスで「国分」バス停下車

外部リンク

壱岐国分寺跡 - 長崎県ホームページ
壱岐嶋分寺跡 - 長崎県教育庁学芸文化課「長崎県の遺跡大辞典」

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