壺屋焼

壺屋焼（つぼややき）

沖縄を代表する陶器の一つで、那覇市壺屋地区を中心に、読谷村などでも作られています。その歴史は古く、古琉球時代から脈々と受け継がれてきた伝統の技が、今もなお息づいています。

歴史

古琉球時代

琉球における焼き物の歴史は、先史時代の土器にまで遡りますが、本格的な発展は高麗瓦が登場する12～13世紀以降のことです。浦添城跡などからは、「癸酉年高麗瓦匠造」と刻まれた高麗瓦が出土しており、この「癸酉」が1153年か1273年を指すという説が有力です。ただし、これらの高麗瓦が沖縄で焼かれたのか、朝鮮半島で焼かれたのかは、まだ明らかになっていません。

近年、浦添ようどれの発掘現場からは、高麗系瓦の窯跡らしきものが発見されており、14世紀後半から15世紀前半には、琉球で独自に高麗系瓦が製造されていた可能性も指摘されています。16世紀には、中国からの帰化人で、琉球最初の瓦工とされる渡嘉敷三良が活躍しました。

また、『球陽』には、尚永王時代（1573年 - 1589年）に、初代瓦奉行に汪永沢が任命され、瓦や陶器の生産を管理したという記述があります。この「焼瓷」とは、今日の荒焼（アラヤチ）による甕を指すとされ、当時、首里王府によって屋根瓦と荒焼が生産・管理されていたと考えられます。

荒焼の起源は不明な点が多いものの、14世紀後半以降、中国や東南アジアとの交易が活発になる中で、南方から酒甕や壺などが琉球にもたらされ、その際に製法も伝来したと考えられています。また、12世紀以降には、中国の焼き物や徳之島のカムイ焼も輸入されており、沖縄で広く使用されていました。

近世琉球

1609年、琉球王国は薩摩藩の支配下に入ります。1616年には、尚寧王が朝鮮陶工の一六、一官、三官を薩摩から招聘し、湧田（現在の那覇市泉崎付近）で陶器を作らせました。これが湧田焼の始まりです。

また、読谷村喜名でも、1670年頃から荒焼を中心とした陶器が盛んに生産され、喜名焼と呼ばれる古窯がありました。喜名焼では、水甕や酒甕、油壺など様々な陶器が作られており、南蛮焼はここから始まったという説もあります。他にも、知花窯や宝口窯といった古窯も知られています。

1670年には、平田典通が清に派遣され、赤絵の技術を学ぶなど、中国からの技術導入も行われました。

壺屋の創設

1682年、尚貞王の時代に、湧田窯、知花窯、宝口窯の三つの窯が統合され、牧志村の南（現在の壺屋）に新しい窯場が誕生しました。これが現在の壺屋焼の始まりです。壺屋焼は琉球最大の窯場となり、製品は国内消費や交易に利用され、琉球使節が江戸に上る際に、将軍への献上品である泡盛を入れる容器としても使われました。江戸時代の遺跡からも、壺屋焼の徳利が出土しており、当時の流通を物語っています。

明治以降の壺屋焼

明治時代に入ると、琉球王府の廃止や安価な焼き物の流入により、壺屋焼は一時低迷期を迎えます。しかし、大正時代末期から始まった民藝運動に触発され、陶工たちは新たな展開を見せます。柳宗悦や濱田庄司らの指導や助言によって、壺屋焼は再び活気を取り戻し、その実用性と美しさが再評価されるようになりました。

戦後の壺屋焼

沖縄戦で大きな被害を受けた那覇でしたが、壺屋地区は比較的被害が少なかったため、戦後の復興は壺屋から始まりました。収容所にいた職人たちが壺屋に戻り、窯の修理や陶器の製造を再開しました。1945年11月には、140名の先遣隊が壺屋に入り、復興に尽力しました。その後、壺屋の人口は急増し、那覇の復興を牽引しました。

読谷のやちむん村

壺屋が都市化するにつれ、薪窯の使用が困難になったため、1970年代には、読谷村に窯を移す陶工が増えました。読谷の丘陵地は新たな窯場となり、「やちむんの里」として発展しました。

作品の特徴

壺屋焼は、大きく分けて「荒焼」と「上焼」の二種類があります。

荒焼（アラヤチ）

14～16世紀頃にベトナム方面から伝わった焼き物で、釉薬をかけずに1000度で焼き締めます。鉄分を含んだ陶土の風合いをそのまま生かした素朴な味わいが特徴で、主に水や酒を貯蔵する甕として使われていました。近年では、日用食器やシーサーなども作られています。

上焼（ジョウヤチ）

17世紀以降に朝鮮陶工によって始められた絵付陶器で、陶土に白土を塗って化粧し、色を付けた後、釉薬をかけて焼成します。茶碗や皿、壺などの日用品のほか、泡盛酒器の抱瓶やカラカラなど、沖縄独特の器も作られています。絵付けには、動植物や風景、抽象模様などが用いられ、特に魚紋が多く見られます。また、異国船や異国人を描いたものもあり、エキゾチックな雰囲気を醸し出しています。上焼は、その装飾性の高さから、庶民にも広く愛されました。

壺屋焼は、その長い歴史の中で、様々な影響を受けながら独自の発展を遂げてきました。現在も、伝統の技法を受け継ぎながら、新たな表現を追求する陶工たちが、魅力的な作品を生み出し続けています。

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