外藩蒙古

外藩蒙古とは

外藩蒙古（がいはんもうこ、満洲語: ᡨᡠᠯᡝᠷᡤᡞ ᡤᠣᠯᠣᡞ ᠮᠣᠩᡤᠣ、転写：tulergi goloi monggo）は、清朝に臣従したモンゴル人のうち、モンゴル草原の一角において固有の部族組織を保持し、ボルジギン氏や非ボルジギン氏の子孫であるモンゴル貴族によって統治された諸部族を指します。

清朝は、モンゴル人を以下のように3つのカテゴリーに分類しました。

1. 八旗蒙古: 古くから清朝の皇族であるアイシンギョロ家に臣従し、満洲人と同等の待遇を受け、官僚として王朝に仕えた人々です。
2. 内属蒙古: 首長家が取り潰され、清朝皇帝の直属となった部族で、モンゴル草原の一部に部族組織を維持しつつ、皇帝の支配下に置かれました。具体的には、チンギス・ハン一族の旧宗家の領民であったチャハル部と、準宗家のアルタン・ハン一族の旧領民であるトゥメト部が含まれます。
3. 外藩蒙古: 上記の八旗蒙古と内属蒙古を除く、清朝に臣従した全てのモンゴル諸侯および部族を指します。これらの諸侯は、清朝から牧地を割り当てられ、世襲で領主や貴族としての地位を認められました。

外藩蒙古の法制上の分類

清朝は、法制上、モンゴルを「八旗蒙古」「内属蒙古」「外藩蒙古」の3つに分類しました。

八旗蒙古: 固有の領域を持たず、満洲人同様に清朝の官僚として活動しました。
内属蒙古: チャハル部とトゥメト部は、万里の長城と接する草原の一部に居住し、皇帝直属の支配下にありました。
外藩蒙古: 草原の領地と領民を世襲で支配するモンゴル諸侯は、すべて外藩蒙古に分類されました。

理藩院による外藩蒙古の分類

理藩院（理藩部）の法典によれば、外藩蒙古はさらに以下の2つに大別されます。

1. 内ジャサク六盟四十九旗: 清朝の建国初期（17世紀初頭 - 1636年）に服属した諸侯で、現在の内モンゴル自治区の中央部に分布していました。
2. 外ジャサク四部落等処一百五十旗: 1693年以降に清朝に服属した諸侯で、現在の内モンゴル自治区東部（フルンボイル市）や西部（アルシャー盟）、現モンゴル国、現新疆ウイグル自治区、青海省などに居住していました。

欽定理藩部則例における詳細な分類

清朝の「藩部」の法典である『欽定理藩部則例』（1908年）では、外藩蒙古を「内ジャサク六盟四十九旗」と「外ジャサク四部落等処一百五十旗」に分類し、さらに具体的に以下のように分類しています。

内ジャサク六盟四十九旗

ジェリム盟（哲里木盟）：10旗
ジョソト盟（卓索図盟）：5旗
ジョーオダ盟（昭烏達盟）：11旗
シリンゴル盟（錫林郭勒盟）：10旗
ウランチャブ盟（烏蘭察布盟）：6旗
イフ・ジョー盟（伊克昭盟）：7旗

外ジャサク四部落等処一百五十旗

喀爾喀汗山盟圖什業圖汗部落：20旗（現モンゴル国）
喀爾喀克魯倫巴爾城盟車臣汗部落：23旗（現モンゴル国）
喀爾喀扎克河源畢都哩雅諾爾盟扎薩克圖汗部落：19旗（現モンゴル国）
喀爾喀齊齊爾哩克盟三音諾彦部落汗：24旗（現モンゴル国）
駐箚西寧辦事大臣所屬：29旗（現中国青海省）
ホブド（科布多）参賛大臣所屬：19旗（現モンゴル国）
イリ（伊犁）将軍所屬：13旗（現中国新疆ウイグル自治区）
陝甘総督所屬額濟納舊土爾扈特扎薩克多羅貝勒：1旗（現中国内モンゴル自治区）
駐箚寧夏理事司員所屬阿拉善霍碩特扎薩克和碩親王：1旗（現中国内モンゴル自治区）
黒龍江将軍所屬伊柯明安額嚕特扎薩克頭等台吉：1旗（現中国内モンゴル自治区）

その他のモンゴル系集団

青海地方の玉樹四十族の一部や、ダンラ山脈南方のホル三十九族、ダム草原のオイラト系達木蒙古など、外藩蒙古に含まれないモンゴル系の集団も存在します。

日本における紹介

日本で最初に清朝の法令を体系的に紹介した『清国行政法』では、「蒙古」を「外蒙古」、「内蒙古」、「青海蒙古」の3種類に区分していますが、これは清朝の実際の分類とは異なります。

外藩蒙古の成立

1691年、ドローン・ノール会盟により、康熙帝はハルハ王家からモンゴル皇帝として推戴され、ハルハを始めとする外蒙古は、清朝皇帝から爵位を受ける形でハルハ王家が自治統治する保護領となりました。

外藩蒙古の首長の権利と義務

外藩蒙古の首長は、清朝から世襲で領地と民を統治する権利を認められましたが、同時に清朝に対する忠誠と貢納の義務を負っていました。

参考文献

宮脇淳子『モンゴルの歴史』(東京・刀水書房2002)
拉巴平錯・陳家璡主編『欽定理藩部則例』(北京・全国図書館図書縮微中心、1992)
臨時台湾旧慣調査会『臨時台湾旧慣調査会第一部報告 清国行政法』第一巻下、（東京・臨時台湾旧慣調査会1914)

関連項目

八旗蒙古
内属蒙古
内蒙古
外蒙古
理藩院
盟旗制度
* 旗 (行政単位)

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