多田三八郎

多田三八郎：武田家を支えた剛将

多田三八郎（ただ さんぱちろう）は、戦国時代の武将で、武田信虎・信玄の二代に仕えました。諱は昌澄、のちに昌利と名乗りました。法名は宗樊。後世には、原虎胤、横田高松、小幡虎盛、山本勘助と共に武田の五名臣に数えられています。

生い立ちと武田家への仕官

多田氏は摂津源氏の流れを汲むとされ、源頼光や源満仲の子孫であるとも伝えられますが、詳しい系譜は明らかではありません。『甲陽軍鑑』によれば、美濃国出身で、弓矢の修行のために甲斐国へ渡り、武田信虎に仕えて足軽大将になったとされています。信虎の子・晴信（後の信玄）にも引き続き仕え、数々の武功を挙げ、全身に27カ所もの傷を負ったという逸話も残っています。

記録に残る活躍

確実な記録資料としては、天文16年（1547年）8月の信濃国佐久郡・志賀城攻めでその名が見られます。関東管領・上杉憲政の援軍との小田井原の戦いでは、板垣信方らと共に活躍しました。翌天文17年（1548年）には、信濃守護・小笠原長時との戦いにおいて、その功績を認められ信玄から感状を受けています。

伝説

『甲斐国志』には、三八郎が信濃虚空蔵山砦を警護していた際、地獄の妖怪「火車鬼」を退治したという伝説や、甲府市湯村の湯村温泉で天狗を倒したという鬼の湯伝説が記されています。

川中島の戦いと晩年

永禄4年（1561年）の第四次川中島の戦いの頃には既に病床にあり、自身の代わりに息子を参戦させています。永禄6年（1563年）12月22日に死去。墓所は長野県諏訪郡富士見町にある常昌寺にあります。

子孫

『寛永諸家系図伝』などによると、三八郎には新八郎昌治（昌春）、八右衛門昌頼、治部右衛門昌俊（満俊）という三人の息子がいました。長男の新八郎は元亀元年に病死し、その子の多田正吉が徳川家康に仕えて旗本になったとされています。

三男の昌俊は武田家を出奔し、相模国の後北条氏に仕えましたが、武蔵国岩槻で戦死したとも、天正10年（1582年）の武田家滅亡に伴い殉死したとも伝えられています。昌俊の子・多田昌綱は大伯父にあたる土屋昌続（昌次）に養育され、武田氏滅亡後は徳川氏に仕え、徳川義直の守役となりました。

各種系図

多田氏の系図は複数存在し、出自について様々な説があります。

『増澤系図』：多田氏政（源頼政十三代後胤）－多田久政－多田久平（満頼）
中田憲信編纂『諸系譜』：多田重国－満重－満継－季満－満氏－満長－満秀－多田貞弘（満頼）

まとめ

多田三八郎は、武田家を支えた勇猛な武将であると同時に、数々の伝説に彩られた人物です。その生涯は、戦国時代の武将の生き様を今に伝える貴重な史料と言えるでしょう。

参考文献
平山優「多田三八郎」『新編武田信玄のすべて』新人物往来社、2008年。 
『寛政重脩諸家譜』 第二輯、國民圖書、1923年4月23日。

関連項目

* 火車 (妖怪)・・・「火車鬼」を退治したという伝説がある。

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