大中臣能隆

大中臣能隆（おおなかとみ の よしたか）

大中臣能隆は、平安時代後期から鎌倉時代前期にかけての公卿であり、伊勢神宮の祭主を務めた人物です。神祇大副・大中臣親隆の三男として生まれ、官位は従二位、神祇大副にまで昇りました。特に、伊勢神宮祭主を28年もの長きに亘って務め上げたことは、彼の功績として特筆されます。朝廷と鎌倉幕府の双方と良好な関係を築き、その地位を確立しました。

経歴

能隆は、仁安2年（1168年）に外祖父である卜部兼友が神祇権大副を辞任したのを受け、神祇少祐に任ぜられました。翌年には従五位下に叙爵され、官位を上げていきます。

治承2年（1178年）には従五位上、治承3年（1179年）には正五位下へと昇進し、寿永元年（1183年）には神祇権少副に任ぜられます。元暦元年（1184年）には従四位下に叙されました。文治元年（1185年）には、父である親隆が伊勢神宮祭主を辞退したことを受け、能隆がその後を継いで祭主に任ぜられました。この際、大中臣公宣や大中臣為定も祭主の職を求めていましたが、勅命によって能隆に決定しました。文治2年（1186年）には、神祇権大副であった大中臣親俊が亡くなったことを受け、能隆が権大副に任ぜられ、同年には従四位上に昇叙しました。

文治5年（1189年）には正四位下に叙され、建久元年（1190年）には神祇大副に転じます。建久9年（1198年）には従三位に叙され、公卿の仲間入りを果たしました。承元4年（1210年）には正三位に進んでいます。

建暦2年（1212年）に伊勢神宮祭主を辞任し、建保4年（1216年）には神祇大副も辞任しますが、建保5年（1218年）には再び神祇大副に任ぜられます。承久4年（1222年）には従二位・伊勢神宮祭主に叙任されました。祭主が二位に叙されるのは、能隆が初めてのことでした。

寛喜元年（1229年）には祭主を辞任する意向を示し、寛喜2年（1230年）には後任の人選に関する会議が行われました。同年、病のために祭主の座を長男である隆宗に譲り、貞永元年（1232年）に出家しました。天福2年（1234年）に89歳で亡くなりました。

官歴

以下は、『公卿補任』に記載されている能隆の官歴です。

仁安2年12月13日（1168年1月24日）：神祇少祐に任ぜられる
仁安3年（1168年）7月19日：従五位下に叙される
治承2年（1178年）正月30日：従五位上に叙される
治承3年（1179年）3月11日：正五位下に叙される
寿永元年12月7日（1183年1月2日）：神祇権少副に任ぜられる
元暦元年（1184年）10月6日：従四位下に叙される
文治元年（1185年）11月25日：伊勢神宮祭主に補される
文治2年（1186年）
4月6日：神祇権大副に任ぜられる
4月29日：復任
11月27日：従四位上に叙される
文治3年12月4日（1188年1月4日）：復任
文治5年（1189年）11月15日：正四位下に叙される
建久元年（1190年）7月18日：神祇大副に転じる
建久9年（1198年）11月21日：従三位に叙される
承元4年（1210年）2月19日：正三位に叙される
建暦2年（1212年）11月：伊勢神宮祭主を辞す
建保4年（1216年）4月19日：大副を辞す
建保5年12月12日（1218年1月10日）：更に神祇大副に任ぜられる
承久4年（1222年）
2月26日：伊勢神宮祭主に還補
11月22日：従二位に叙される
寛喜2年（1230年）4月17日：祭主を男隆宗に譲る
貞永元年（1232年）7月22日：出家

系譜

父：大中臣親隆
母：卜部兼友の娘
妻：平棟範の娘
長男：大中臣隆宗（1168-1226）
七男：大中臣隆通（1208-1249）
生母不明の子女
次男：大中臣隆経（生没年不詳）
三男：大中臣隆雅（1184-生年不詳）
四男：大中臣隆宣（生没年不詳 - 1235）
五男：大中臣隆則（生没年不詳）
六男：大中臣隆氏（生没年不詳 - 1225）
男子：大中臣隆仙
男子：能豪
男子：隆豪

参考文献

『藤波家譜』（東京大学史料編纂所所蔵）
國學院大學日本文化研究所『大中臣祭主藤波家の研究』八木書店、2000年

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