大井行吉

大井行吉（おおい ゆきよし）は、戦国時代の武将であり、信濃国岩尾城（現在の長野県佐久市岩尾）の第5代城主です。信濃国守護代を務めた大井氏の庶流、岩尾大井氏の出身です。父は大井行頼。

生涯

天文11年（1542年）に岩尾城で生まれ、幼名は小次郎と名付けられました。研究者の丸島和洋は、天正10年（1582年）に高野山蓮華定院へ書状を送った岩尾信景と行吉を同一人物と推測し、実名を「信景」としています。

天文20年（1551年）に父・行頼が武田氏に出仕したため、行吉は武田氏のもとで育ちました。弘治2年（1556年）に15歳で元服し、次郎右衛門行吉と名乗ります。

永禄元年（1558年）の川中島の戦いで初陣を飾り、翌年の今川氏との薩陲峠（さったとうげ）合戦や興津（おきつ）合戦にも参加。永禄4年（1561年）の第四次川中島の戦いでは、父・行頼と共に奮戦しました。元亀2年（1571年）には遠江国（現在の静岡県西部）の乾城、翌年には上野国（現在の群馬県）の箕輪城の守備などで活躍しました。

天正2年（1574年）には、武田勝頼の遠江国高天神城攻略に従軍。翌年、勝頼が織田信長、徳川家康と三河国長篠（現在の愛知県新城市）で戦った際には、春日虎綱（かすがとらかげ、高坂昌信）に属して海津城（現在長野市）を守備しました。

天正10年（1582年）3月、織田信長によって武田氏が天目山で滅亡すると、行吉は織田方の攻撃を避けて笛吹峠（山梨県）に隠れました。同年6月、本能寺の変が起こり信長が死去、織田方が京都へ引き上げると、北条氏政が信濃、甲斐を配下に治めようと進出。行吉は北条氏の家臣である大道寺政繁によって氏政に降伏し、岩尾城へ帰還しました。

しかし、同年10月、信濃、甲斐に進出した北条氏直が徳川家康と和睦。家康配下の依田信蕃（よだのぶしげ）が佐久郡の大井城をはじめとする多くの城を攻略しましたが、行吉は依田信蕃に従うことを拒否し、岩尾城に立て籠もりました。

天正11年（1583年）2月20日、徳川軍監の柴田康忠（しばたやすただ）と依田信蕃の軍勢が岩尾城へ総攻撃を仕掛けましたが、行吉側はこれを良く防ぎました。しかし、依田信蕃とその弟・信幸が自ら攻め込んだところを銃撃され討死しました。同年3月3日、行吉は柴田康忠の説得により岩尾城を開城し明け渡し、自らは上野国松井田城主・大道寺政繁の采地（領地）に移り、保渡田村（現在の群馬県高崎市保渡田町）に幽居しました。

天正12年（1584年）6月12日、保渡田村にて死去。享年43歳。

参考文献

大井敏夫『岩尾家譜（現代語訳）』1996年
市川武治『もう一人の真田 依田右衛門佐信蕃』檪、1993年
佐藤春夫『戦国佐久』（「文芸春秋」1950年11月）
日本城郭大系 第8巻 長野・山梨
* 柴辻俊六、平山優、黒田基樹、丸島和洋『武田氏家臣団人名辞典』東京堂出版、2015年

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