大井城

大井城（おおいじょう）

長野県佐久市岩村田に位置する大井城は、中世に信濃国守護代も務めた大井氏の居城でした。別名、岩村田館とも呼ばれ、長野県の史跡に指定されています。

歴史

大井城は、湯川の断崖に沿って北から石並城、王城、黒岩城の三つの城で構成されていました。この地は、清和源氏小笠原氏の流れを汲む大井朝光が、大井荘の地頭として居を構えたことに始まります。以来、文明16年（1484年）に落城するまで、およそ260年もの間、大井氏宗家の本拠地として佐久郡東北部を中心に勢力を誇りました。

二代城主大井光長は、弘安2年（1279年）に大井荘落合に新善光寺を創建し、梵鐘を寄進しました。また、「一遍上人絵伝」に描かれた大井太郎（光長）の館が、具体的にどの場所にあったかは定かではありません。

建武2年（1335年）には中先代の乱が起こり、四代城主大井朝行は足利方（北朝）につき、朝廷軍（南朝）と戦いました。佐久郡で激戦が繰り広げられましたが、最終的に大井城は落城しました。

その後、大井城は復旧し、五代城主大井光長（光栄）は信濃国守護代を務めました。六代城主大井光矩は、応永7年（1400年）の大塔合戦で、守護小笠原長秀を救うなどの活躍を見せました。

七代城主大井持光の時代には、大井氏の全盛期を迎えました。城下は大変賑わい、民家は六千軒にも及び、交易も盛んで、国府があった松本よりも繁栄していたと伝えられています。また、持光は関東管領足利持氏に仕え、武功をあげました。この時期、大井氏は北佐久郡のほとんどを領有し、上州や武州にも所領を持ち、京都参勤には1千騎を率いたとされています。永享10年（1438年）に永享の乱が起こると、持光は足利持氏の遺児を安養寺に匿いました。

八代城主大井政光の時代には、甲斐への侵攻や甲斐勢の侵攻を撃退するなど、周辺地域との戦いが繰り広げられました。九代城主大井政朝は、文明11年（1479年）に伴野氏との戦いで大敗し、生け捕りとなりました。その後、十代城主大井安房丸の時代、文明16年（1484年）に村上政清の大軍により大井城は落城し、岩村田の城下も焼け野原となりました。城主安房丸は小諸へ逃れ、大井氏宗家は滅亡しました。

大井氏宗家は滅亡しましたが、大井氏の一門や家臣は所領を維持し、長窪大井氏の大井玄慶（安房丸の子、政信）が岩村田城主となりました。しかし、天文12年（1543年）に大井貞隆は武田信玄に攻められ、長窪城へ追われることになります。天正10年（1582年）に武田氏が滅亡すると、岩村田城主大井雅楽助は徳川家康麾下の依田信蕃に下り、城を明け渡しました。

現在の状況

大井城の遺構は、江戸時代の文献に記述が残っていますが、現在ではほとんど残っていません。主郭部は王城公園となり、県天然記念物の大ケヤキがあります。往時の姿を偲ぶことは難しいですが、この地には歴史が刻まれています。

参考文献

『日本城郭大系』 第8巻 長野・山梨 1980年
笹本正治『川中島合戦は二つあった』1998年
田辺久子『上杉憲実』1999年
坂田祐樹『関東公方成氏』2004年
大井信『大井氏ものがたり』2005年
大井敏夫『岩尾家譜（現代語訳）』1996年

外部リンク

佐久地域の歴史～岩村田郷の繁栄の巻5 - ウェイバックマシン
佐久の大井氏盛衰記 - ウェイバックマシン
大井城 ～埋もれた古城～ - ウェイバックマシン
大井城～城と古戦場～

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