大伴兄麻呂

大伴 兄麻呂（おおとも の えまろ）

大伴兄麻呂は奈良時代の著名な公卿で、特にその昇進過程において圧倒的な実績を残しました。彼は大伴御行の子であり、従三位・参議という官位にまで昇り詰めた政治家です。彼の官歴や生涯は、当時の日本の政治状況や社会構造を知る上で重要な手がかりとなります。

経歴

初期のキャリア

兄麻呂は天平3年（731年）に従五位下の地位に任じられ、尾張守として地方行政に関与しました。その後、天平9年（737年）には主税頭に任命され、京に戻ります。このように彼は早くから重要な役職に就くことができ、その才能を発揮します。

地方官からの昇進

さらに、天平10年（738年）には美作守、続いて天平17年（745年）には美濃守として再度地方官を務めました。これらの年次の中で、兄麻呂は天平13年（741年）に正五位下に昇叙されるなど、地道な努力が評価されます。

中央政治への復帰と昇進

その後、天平18年（746年）に従四位下、さらに天平20年（748年）には正四位下に昇進し、聖武天皇の時代において急速に位を上げました。この時期の昇進は彼の政治的手腕や行政能力を物語るものであり、特に信任の厚さを示しています。

参議としての役割

天平勝宝元年（749年）、孝謙天皇の即位に際して兄麻呂は参議に任命されました。同年8月には紫微中台が設置され、長官である藤原仲麻呂の次官に就任し、光明皇后を支える役割を果たしました。このように、彼は名実ともに重要な権力者となっていきます。さらに、天平勝宝3年（751年）には従三位に昇進し、彼の政治的影響力は一層強まります。

謀反の疑惑とその晩年

しかし、その後の情報は乏しく、特に天平宝字2年（758年）には彼が謀反を企てたとの噂もありました。このような疑惑が彼のキャリアにどのような影響を与えたのかは不明ですが、彼の徐々に姿を見せなくなった理由がここにあるのかもしれません。

官歴

兄麻呂の官歴は非常に詳細であり、『続日本紀』によって記録されています。彼は長いキャリアを通じて多くの役職に就いており、次のような経歴を持っています。

• - 時期不詳：正六位上
• - 天平3年（731年）

- 正月27日：従五位下
- 5月14日：尾張守

• - 天平9年（737年）

- 12月23日：主税頭

• - 天平10年（738年）

- 4月22日：美作守

• - 天平13年（741年）

- 閏3月5日：正五位下

• - 天平17年（745年）

- 2月24日：美濃守

• - 天平18年（746年）

- 4月22日：従四位下

• - 天平20年（748年）

- 2月19日：正四位下

• - 天平勝宝元年（749年）

- 7月2日：参議
- 8月10日：兼紫微大弼
- 11月29日：正四位上

• - 天平勝宝3年（751年）

- 正月25日：従三位

系譜

大伴兄麻呂は、大伴御行を父に持つものの、母については明確な記録が残っていません。彼には大伴潔足という子が存在し、その生涯もまた注目されています。兄麻呂の家系は奈良時代において一つの重要な氏族として、国家の治理に貢献してきました。今後も彼らの歴史的な役割を理解するための研究が深まることが期待されます。

参考文献

• - 宇治谷孟『続日本紀 （上）』講談社〈講談社学術文庫〉、1992年
• - 宇治谷孟『続日本紀 （中）』講談社〈講談社学術文庫〉、1992年
• - 宝賀寿男『古代氏族系譜集成』古代氏族研究会、1986年

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