大倉千代子

大倉千代子：多様な芸名と活躍で彩られた女優の生涯

大倉千代子（1915年8月31日生～没年不明）は、日本の映画史において特筆すべき存在です。複数の芸名を使い分け、数々の名作に出演、その幅広い演技力と活動歴から、日本の映画界に貢献した女優の一人と言えるでしょう。

早期活動と芸名

東京府東京市芝区に生まれた大倉千代子は、旧制小学校卒業後、満10歳の若さで近代座に参加。五月信子、高橋義信夫妻が主宰するこの劇団で舞台経験を積み重ね、『高橋お傳』『奈津子の母』『嬰児殺し』『女給』などの演劇作品に出演しました。

近代座の活動と並行し、映画界にも進出します。14歳で「月浦かすみ」の芸名で出演した『仮名屋小梅』（1930年）が映画デビュー作となります。その後も「秋月弘子」として数々のサイレント映画に出演、新興キネマ配給作品にも携わりました。満州国巡業を最後に近代座を退団した彼女は、その後も尾上菊太郎プロダクション製作の映画に活躍の場を移します。

日活時代と主要作品

1933年、日活太秦撮影所へ移籍し、「大倉千代子」と改名。山中貞雄監督の『盤嶽の一生』に出演するなど、着実にキャリアを重ねていきます。翌年には第一映画に移籍。数々の作品に出演する中、溝口健二監督の『虞美人草』（1935年）で「小夜子」役を演じ、注目を集めます。さらに、溝口健二監督の弟子である坂根田鶴子の初監督作品『初姿』（1936年）では主演に抜擢されるなど、重要な役どころを担いました。

マキノトーキー製作所への移籍と戦時下

1936年、マキノトーキー製作所に移籍。同社は翌年には解散してしまいますが、そこで培った経験は、彼女にとって貴重な財産となったはずです。その後、日活京都撮影所へと移籍し、1942年の大映設立後も日活京都撮影所（大映京都撮影所）で活動した記録が残されています。1943年には京都南座での舞台公演にも出演するなど、戦時下においても精力的に活動していました。

双葉山定次との噂と戦後

大倉千代子の活躍時期と重なるように、当時の横綱、双葉山定次との結婚の噂が流れていましたが、その真偽は不明です。1936年発行の『野球界』誌にもこの話題が取り上げられたほど注目を集めていました。

戦後も映画界で活動を続け、『ひよどり草紙』（1954年）、『花吹雪 御存じ七人男』（1954年）などに出演、1975年には『週刊読売』の座談会にも参加するなど、還暦を迎えても健在な姿を見せていました。しかし、それ以降の消息は明らかになっていません。

フィルモグラフィ

大倉千代子のフィルモグラフィーは膨大です。新興キネマ時代は「月浦かすみ」「秋月弘子」名義で多くのサイレント映画に出演。日活時代には山中貞雄監督作品など数々の作品に携わり、第一映画では溝口健二監督作品を含む話題作に出演。マキノトーキー製作所時代にはトーキー作品を中心に活躍。そして再び日活京都撮影所に戻り、戦後も作品に出演しています。これらの作品は、日本の映画史において重要な位置を占めており、大倉千代子の貢献は大きいと言えるでしょう。彼女が出演した多くの作品が、東京国立近代美術館フィルムセンターなどに所蔵されており、現在もその作品を観ることができます。

まとめ

大倉千代子は、複数の芸名、様々な映画会社を渡り歩き、時代劇から現代劇まで幅広い役柄を演じ分けた、日本の映画界を代表する女優の一人です。彼女の活動は、戦後まで続き、日本の映画史に大きな足跡を残しました。多くの作品が現在も残されていることから、彼女の演技を後世に伝えることが重要と言えるでしょう。今後の研究で、更なる彼女の活動の詳細が明らかになることを期待したいです。

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