大口盆地

大口盆地

大口盆地は、九州南部、鹿児島県伊佐市に位置する盆地で、伊佐盆地、または伊佐平野とも呼ばれています。面積は約140平方キロメートルに及び、鹿児島県内で最も広い盆地として知られています。

地理

大口盆地の標高は100〜200メートルで、周囲は肥薩火山群（西部、北部、東部）と北薩火山群（南部）に囲まれています。この地形のため、海岸沿いの平地に比べて年平均気温が1〜1.5℃低く、特に冬期には2℃も低くなることがあり、「鹿児島の北海道」と呼ばれることもあります。2016年1月25日には、伊佐市大口で九州の低地としては過去最低の-15.2℃を記録しました。また、春や秋には霧が発生しやすいという特徴もあります。

盆地の北部から南部にかけて羽月川が縦断し、南部では東から西に流れる川内川に合流しています。盆地周辺には河岸段丘が分布し、南部にはシラス台地が見られます。盆地の中央部から南東部にかけては、菱刈丘陵が横たわっています。

歴史

古代の大口盆地は荒地でしたが、755年（天平勝宝7歳）に930名が入植し菱刈郡が設置されました。本格的な開発は江戸時代に入ってからで、河川改修が頻繁に行われ、広大な水田地帯へと変貌を遂げました。これにより、地域経済と農業生産の基盤が確立されました。

地質

大口盆地の地質は、基盤となる四万十層群の上に、鮮新世から更新世にかけて活動した肥薩火山群や北薩火山群の噴出物が重なって形成されています。大口盆地付近では噴出物の層が比較的薄かったため、盆地の原型が形成されました。この上には、約33万年前に加久藤カルデラから噴出した加久藤火砕流による溶結凝灰岩や、約2万5千年前に姶良カルデラから噴出した入戸火砕流によるシラスが堆積しています。

入戸火砕流以降は湖となり、沖積層が形成されましたが、川内川の浸食によって約3000年前までに排水され、現在の盆地地形が形成されました。これらの地質学的プロセスが、大口盆地の独特な地形と肥沃な土壌を形成しています。

まとめ

大口盆地は、その地理的特徴、歴史的背景、そして地質学的成り立ちが複雑に絡み合った場所です。独特の気候や地形が地域文化や産業に影響を与え、豊かな自然と歴史が息づく地域として、多くの人々に親しまれています。

参考文献

大口市郷土誌編さん委員会編　『大口市郷土誌　上巻』　大口市長大樅利夫、1978年
菱刈町郷土誌編纂委員会編　『菱刈町郷土誌　改訂版』　菱刈町、2007年

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