北薩火山群

北薩火山群：大地の鼓動が刻む多様な景観

北薩火山群は、九州南西部、鹿児島県薩摩地方北部に位置し、東西約50キロメートル、南北約40キロメートルにわたる広大な範囲に広がる火山群です。この地域は、多様な火山地形と、それらがもたらす温泉や鉱床など、豊かな自然と地質学的な特徴を有しています。

火山群の成り立ち

この火山群は、四万十層群と呼ばれる基盤地層の上に形成されました。比較的小規模な溶岩流、溶岩ドーム、火砕流堆積物などが点在しており、かつてはカルデラ湖や堰止め湖が存在していたと考えられています。これらの湖底堆積物の地層は、当時の火山活動の様子を物語る貴重な証拠です。火山活動は漸新世から更新世にかけて活発であり、特に新しい藺牟田火山や丸山などを除いて、多くの火山は長年の侵食により原形を留めていない山塊となっています。

地質と資源

火山活動の名残として、この地域には多くの熱水鉱床が形成されました。これにより、串木野鉱山、入来鉱山、山ヶ野金山などの鉱山が開発され、地域の経済に貢献しました。また、火山活動は豊富な温泉資源ももたらしており、湯之元温泉、川内高城温泉、宮之城温泉、市比野温泉、藺牟田温泉、郡山温泉など、多くの温泉地が人々の憩いの場となっています。

地域別の火山活動の特徴

西部

薩摩川内市といちき串木野市の境界付近には、前期漸新世に活動した比較的古い火山群が存在します。これらの火山は、主に安山岩で構成されていますが、長い年月を経て変質している場所が多く見られます。代表的な山として、辨財天山（標高518.7メートル）や冠岳（標高516.4メートル）が挙げられます。

南部

鹿児島市、日置市、薩摩川内市の境界付近には、後期漸新世に活動した火山群があります。この地域の火山は、主に安山岩と流紋岩で構成されており、八重山付近には玄武岩も見られます。重平山（標高523.1メートル）や八重山（標高676.8メートル）が代表的な火山です。また、鹿児島市と姶良市の境界付近には、中期更新世に活動した比較的新しい火山群も存在し、主に安山岩とデイサイトで構成されています。この地域の代表的な山としては、赤崩（標高579.0メートル）や牟礼ヶ岡（標高552.3メートル）があります。

中部

薩摩川内市とさつま町の境界付近には、中期更新世に活動した比較的新しい火山群があります。これらの火山は主に安山岩で構成されており、丸山（標高217.8メートル）は溶岩ドームとして知られています。また、藺牟田火山は藺牟田池を囲むように連なる溶岩ドーム群で、東西約4キロメートル、南北約7キロメートルの範囲に広がり、舟見岳（標高498.8メートル）、山王岳（標高491メートル）、片城山（標高508.8メートル）、遠見ヶ城（標高474メートル）、飯盛山（標高432メートル、別名：藺牟田富士）などが含まれます。

東部

さつま町と霧島市の境界付近を中心とした直径約15キロメートルの範囲には、前期更新世に活動した火山群があります。これらの火山は、主に安山岩と玄武岩で構成されています。矢止岳（標高669.7メートル）、中岳（標高654.4メートル）、烏帽子岳（標高702.9メートル）、長尾山（標高680.1メートル）、国見岳（標高648.6メートル）、安良岳（標高607メートル）などがこの地域を代表する火山です。

まとめ

北薩火山群は、その多様な火山地形、温泉、鉱床を通して、地球のダイナミズムを体感できる場所です。この地域を訪れることで、火山活動の歴史とその恵みを肌で感じることができるでしょう。

参考文献

• - 町田洋他編　『日本の地形　7　九州・南西諸島』　東京大学出版会、2001年、ISBN 4-13-064717-2
• - 松本達郎ほか　『日本地方地質誌　九州地方』　朝倉書店、1973年

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