大圏コース

大圏コース：地球上の最短距離ルート

地球上の2点間を結ぶ最短距離の経路を大圏コースと言います。これは、地球を球体とみなした際に、その中心を通る平面と地球の表面が交わる円（大円）の一部をたどるルートです。航空機や船舶の航路、さらには弾道ミサイルの飛行経路として、重要な意味を持ちます。

大圏と大圏コース

地球の中心を貫く平面と地球の表面が交わる円を大円と呼び、その大円の一部を弧として2点間を結んだルートが、大圏コースです。経線はすべて大円ですが、緯線は赤道を除き大円ではありません。地球が完全な球体ではなく、回転楕円体であるため、厳密には卯酉線でさえも大圏とは言えません。しかし、多くの場合、地球を近似的に球体とみなして計算されます。

地図上での表現

メルカトル図法の地図では、直線が最短距離に見えますが、これは錯覚です。メルカトル図法で描かれた直線が、大圏コースとなるのは、2点間が同経度にある場合、または赤道上にあり経度の差が180度を超えない場合に限られます。それ以外の場合は、地図上の直線は実際の最短距離（大圏コース）から外れます。方位図法、特に心射図法では、任意の2点間を結ぶ直線が、大圏コースとなります。

航空機と船舶の航路

燃料消費と時間節約の観点から、航空機や船舶は可能な限り大圏コースに近い航路を辿ります。しかし、地形、風や海流、航空交通管制、燃料補給の必要性、さらには政治的な問題など、現実的な制約によって、必ずしも大圏コースを厳密に守ることはできません。

海路

ジャイロスコープやGPSの発達以前は、航海中に大圏コースを維持するのは困難でした。そのため、方位を一定に保つ等角航路が用いられました。それでも、大圏航路が最短であることは認識されており、大航海時代には北西[[航路]]や北東航路の探検などで、可能な範囲で大圏コースに近い航路が試みられました。

空路

航空路は、大圏コースを参考に設定されています。例えば、東京とロサンゼルス間では、西行きはアラスカ付近のほぼ大圏コースを使用することが多い一方、東行きはジェット気流の影響を考慮してハワイ諸島付近の航路が利用されます。冷戦期には、政治的理由から、ソ連上空を通る大圏コースは避けられ、アラスカや東南アジアを経由する航路が主流でした。ロシアと西側諸国の関係改善時には、シベリア上空を通る大圏コースが利用されることもありましたが、2022年のウクライナ侵攻以降は再び利用されなくなっています。また、かつては長距離飛行が難しかったため、島嶼を中継点とするアイランドホッピングが行われていましたが、長距離無着陸飛行が可能になってからは、大圏コースに近い航路へと変更されています。

計算方法

2点間の距離や大圏コースの計算には、球面三角法の公式が用いられます。

弾道ミサイル

軍事的には、大圏コースは弾道ミサイルの飛行経路として非常に重要です。例えば、北朝鮮からアメリカ合衆国本土へのミサイルは、北極圏上空を通る大圏コースを飛行するため、アラスカやグリーンランドのレーダー基地で探知されます。

まとめ

大圏コースは、地球上の最短距離ルートであり、航空機、船舶、そして弾道ミサイルの航路計画に欠かせない概念です。地理的条件、技術的制約、政治的状況など、様々な要因が航路選択に影響を与えることを理解することは重要です。

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