大日本野史

『大日本野史』の概要

『大日本野史』（だいにほんやし）は、日本の歴史を記録した重要な書籍で、後小松天皇から仁孝天皇までの21代の天皇の治世を中心に編纂されています。この歴史書は、幕末に国学者の飯田忠彦によって書かれ、嘉永4年（1851年）に完成しました。全291巻から成り立ち、その内容は幅広い歴史的人物や出来事を網羅しています。一般に『野史』と略されることもあります。

執筆の背景

『大日本野史』は、先代の歴史書である徳川光圀の『大日本史』を補完する形で作成されました。『大日本史』は南北朝の統一（1392年）をもって完結していますが、飯田忠彦はその後の歴史を追究すべく、3 decades（30年以上）にわたって執筆を続け、最終的にこの大作を完成させました。もともとの原本は漢文体で記されており、そのスタイルは歴史書に堅実な格式を与えています。

飯田は、その後の歴史においても重要な影響を及ぼす人物であり、完成後は彼の遺族が明治14年（1881年）に印刷し、公に公表しました。しかし、彼が桜田門外の変に関与したとして逮捕されたのち、自ら命を絶つという悲劇もあり、原本は失われてしまいました。

内容の特徴

『大日本野史』は、特に戦国武将や大名の列伝が充実していることで知られています。江戸幕府へ配慮が求められる江戸時代の部分よりも、室町時代に関する記述が際立つとされています。特に応仁の乱からの封建制の再構築の過程が詳述されており、歴史的な事件や人物の分析に力を注いでいます。

一方で、飯田が利用した史料の中には信頼性に疑問を持たれるものもあります。例えば、陰徳太平記のような史料が引用されていることから、研究者の中にはその正確性に疑念を呈する声もあります。三浦周行や黒板勝美は、内容の正確性に欠けると指摘し、飯田の個人的な視点が反映されているとも述べています。

目次と構成

本書は、「本紀」と「列伝」に分けられており、以下のように構成されています。

本紀

• - 卷之一　本紀第一　後小松天皇
• - 卷之二　本紀第二　称光天皇
• - 卷之三　本紀第三　後花園天皇
• - 卷之四　本紀第四　後土御門天皇
• - 卷之五　本紀第五　後柏原天皇
• - 卷之六　本紀第六　後奈良天皇
• - 卷之七　本紀第七　正親町天皇
• - 卷之八　本紀第八　後陽成天皇
• - 卷之九　本紀第九　後水尾天皇
• - 卷之十　本紀第十　明正天皇
• - 卷之十一　本紀第十一　後光明天皇
• - 卷之十二　本紀第十二　後西天皇
• - 卷之十三　本紀第十三　霊元天皇
• - 卷之十四　本紀第十四　東山天皇
• - 卷之十五　本紀第十五　中御門天皇
• - 卷之十六　本紀第十六　桜町天皇
• - 卷之十七　本紀第十七　桃園天皇
• - 卷之十八　本紀第十八　後桜町天皇
• - 卷之十九　本紀第十九　後桃園天皇
• - 卷之二十　本紀第二十　光格天皇
• - 卷之二十一　本紀第二十一　仁孝天皇（目次のみ）

列伝

全270巻を含み、後妃伝、皇子伝、皇女伝、武将伝、外戚伝など、さまざまなカテゴリーにわかれています。武将伝には足利将軍家や織田氏、豊臣氏、徳川将軍家が主体として描かれ、また文臣や儒学者、歌人なども取り上げられています。

結論

『大日本野史』は、日本の歴史に深く根ざした複雑な出来事や人物を記録した貴重な文献です。その詳細な記述と構成は、後の研究に大きく貢献するため、多くの歴史学者にとって重要な資料とされています。

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