ブル・ラモス

"アパッチ" ブル・ラモス：波乱のプロレス人生

"アパッチ" ブル・ラモス（本名：マヌエル・ラモス）は、1937年8月3日にテキサス州ヒューストンで生まれた、メキシコ系アメリカ人のプロレスラーです。インディアンの血を引く出自をギミックとし、ヒールとしてのポジションを確立しました。その狂暴なファイトスタイルから、「殺人アパッチ」の異名で恐れられました。

ボクシングからプロレスへ

学生時代はボクシングで才能を発揮し、テキサス州のゴールデングローブで優勝するほどの腕前でした。プロレスファンの叔父の勧めで、プロモーターのポール・ボーシュとコンタクトを取り、ダニー・マクシェインの指導を受け、1956年にプロレスラーとしてデビューしました。当初はイタリア系レスラーとして売り出される予定でしたが、インディアンの出自を活かし、"アパッチ" ブル・ラモスとしてリングに上がることになりました。

WWWFでの活躍

デビュー当初は100kgに満たない体格でしたが、キャリアを重ねるにつれてスーパーヘビー級へと成長しました。1967年にはニューヨークのWWWFに登場し、その巨体を活かしたファイトで観客を魅了しました。1968年2月19日には、新設されたマディソン・スクエア・ガーデンのオープニング興行で、ブルーノ・サンマルチノの持つWWWF世界ヘビー級王座に挑戦。その後もサンマルチノと抗争を繰り広げ、エドワード・カーペンティア、スパイロス・アリオン、ビクター・リベラ、ヘイスタック・カルホーンなどの強豪レスラーとも対戦しました。タッグマッチでは、キラー・コワルスキーやプロフェッサー・タナカといったヒール勢と共闘しました。

西海岸での激闘

1969年からはロサンゼルス地区に進出し、ミル・マスカラスとの激しい抗争を展開しました。マスカラスのマスクを破り、髪とマスクを賭けた遺恨戦に持ち込みましたが、敗北し髪を切り落とされました。1970年にはテキサス西部のアマリロ地区でNWAウエスタン・ステーツ・ヘビー級王座を獲得し、ドリー・ファンク・ジュニアの持つNWA世界ヘビー級王座にも挑戦。ワフー・マクダニエルとのインディアン・ストラップマッチも繰り広げました。1971年には再びロサンゼルスに戻り、マスカラスとの抗争を再開。フレッド・ブラッシーとも対戦しました。

パシフィック・ノースウエストでの活躍

1972年からはオレゴン州ポートランドとワシントン州シアトルを拠点とするパシフィック・ノースウエスト・レスリングを主戦場とし、ダッチ・サベージやジミー・スヌーカと抗争しました。NWAパシフィック・ノースウエスト・ヘビー級王座を4度獲得するなど、この地域での人気を不動のものとしました。1974年には、リッキー・ロメロとロッキー・マウンテン・ヘビー級王座を争い、リップ・タイラーから北米ヘビー級王座を奪取しました。

変貌と晩年

一貫してヒールだったラモスですが、1978年にはダラス地区でベビーフェイスに転向。タイガー・コンウェイ・ジュニアと組んでNWAテキサス・タッグ王座を獲得しました。しかし、翌年にはヒールに戻り、古巣のロサンゼルスを襲撃。アル・マドリルからNWAアメリカス・ヘビー級王座を奪取しました。1980年にはMSWAでワフー・マクダニエルやテッド・デビアスらと対戦し、ミシシッピ・ヘビー級王座を獲得しました。1982年に膝の怪我で引退し、故郷のヒューストンで救援サービス業に従事しました。2006年5月27日、肩の感染症により68歳で死去。晩年は糖尿病の影響で足を切断し、盲目となっていたと言われています。

日本での活躍

ラモスは通算8回来日し、日本でもその存在感を示しました。1969年2月の初来日では、ザ・デストロイヤーとタッグを組み、ジャイアント馬場とアントニオ猪木のBI砲が持つインターナショナル・タッグ王座に挑戦しました。韓国遠征にも参加し、大木金太郎のアジアヘビー級王座にも挑戦しています。その後も日本プロレスに参戦し、1972年にはクリス・マルコフと乱闘事件を起こしましたが、後に和解し、マルコフとタッグを組んでアジアタッグ王座に挑戦しました。
1973年からは全[[日本プロレス]]を主戦場とし、キング・イヤウケアと「ザ・タイクーンズ」を結成。1977年にはアブドーラ・ザ・ブッチャーとタッグを組み、馬場&ジャンボ鶴田組のインターナショナル・タッグ王座に挑戦しました。最後の来日となった1978年には、イヤウケアとのタイクーンズで大木&キム・ドク組の同王座に連続挑戦しています。

得意技と獲得タイトル

ラモスの得意技は、フライング・ソーセージ、エルボー・ドロップ、フルネルソン、ネック・ハンギング・ツリーなどです。その強靭な肉体を活かしたファイトスタイルは、多くのファンを魅了しました。

獲得した主なタイトルは以下の通りです。

NWAアメリカス・ヘビー級王座：1回
NWAアメリカス・タッグ王座：2回（w / ブラック・ゴールドマン）
NWAテキサス・ブラスナックル王座：1回
NWAロッキー・マウンテン・ヘビー級王座：1回
NWAウエスタン・ステーツ・ヘビー級王座：2回
NWAウエスタン・ステーツ・タッグ王座：1回（w / ザ・ビースト）
NWAテキサス・タッグ王座：2回（w / キャプテンUSA、タイガー・コンウェイ・ジュニア）
NWAパシフィック・ノースウエスト・ヘビー級王座：4回
NWAパシフィック・ノースウエスト・タッグ王座：5回（w / ケン・マンテル、リッパー・コリンズ、ジェシー・ベンチュラ×2、アイアン・シーク）
NWA北米ヘビー級王座：1回
* ミッドサウス・ミシシッピ・ヘビー級王座：1回

"アパッチ" ブル・ラモスは、その波乱万丈なプロレス人生と、リング内外での人間的な魅力によって、多くのファンから愛されました。

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