大角人事

大角人事とは

大角人事（おおすみじんじ）は、日本海軍の歴史において、1933年（昭和8年）から翌年にかけて大角岑生海軍大臣のもとで行われた人事改定を指します。この人事は、艦隊派が主導する形で条約派の追放を目的としており、特に海軍内部の権力闘争が反映された出来事です。

背景

海軍士官の人事権は海軍大臣専属のものであり、過去にも目立った人事変更が行われていました。例えば、日露戦争の際には、山本権兵衛大臣が指導的な役割を果たし、多くの重要人事を実施しました。しかし、1920年代後半から海軍省における人事に対する軍令部の影響力が増し、特にワシントン海軍軍縮条約やロンドン海軍軍縮条約の締結後には不満が蓄積されました。

その中で、軍令部の権限強化が進み、次第に海軍省を圧迫するようになりました。この転機の一部には、伏見宮博恭王の軍令部長就任と、その下での人事変更が含まれています。特に、大角への圧力が強まり、艦隊派の影響力が一層強化されることとなりました。

主要な人事

大角人事の第一のステップとして、ロンドン条約の批准を手助けした2人の海軍大将が予備役に編入されました。具体的には、元海軍次官の山梨勝之進大将と、前海軍軍令部長の谷口尚真大将がそれぞれ1934年に予備役編入されました。どちらも条約派として知られ、艦隊派にとっては避けるべき存在と見なされていました。

続いて、寺島健中将、左近司政三中将、堀悌吉中将、坂野常善中将の合計4名も予備役編入されました。彼らはロンドン海軍軍縮において重要な役割を果たした人物たちであり、艦隊派の反対勢力として知られていました。

影響

この人事変更は海軍内での権力構造を根本的に変え、多くの将来の大臣候補を失う結果となりました。これにより、海軍内部の調和が崩れ、日米開戦の遠因ともなったと考えられています。山本五十六は堀悌吉の予備役編入に激しい反発を示し、「海軍の大馬鹿人事」と批判しました。また、山梨勝之進は周囲の圧力について触れ、無力感を募らせていました。

その後も、大角海相は艦隊派と見なされていた者たちを予備役編入する人事を続け、1935年から1936年にかけて中村良三大将や小林省三郎中将も同様に処遇されました。これは条約派と艦隊派の対立が和らいでいることを示唆するものであり、海軍全体の政治状況の変化を物語っています。

おわりに

大角人事は、海軍内部の権力闘争やさまざまな背景が複雑に絡まりあった結果、重要な結果をもたらしました。艦隊派と条約派の対立が激化する中で、大角の下での人事は海軍の将来、さらには日本の戦略にも影響を与え、戦後の歴史にまでその影響が及ぶこととなります。

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