大谷光演

大谷光演：多才な僧侶、俳人、そして波乱の生涯

大谷光演（1875年2月27日 - 1943年2月6日）は、明治から大正時代にかけて、浄土真宗の僧侶としてだけでなく、俳人、画家としても活躍した多才な人物です。法名は彰如、俳号は句仏、別号に愚峰を持ちます。東本願寺第二十三代法主、真宗大谷派管長、伯爵という肩書を持ち、妻は三条実美の三女・章子、長男は大谷光暢です。

生い立ちと学問

大谷光演は、東本願寺第二十二代法主・大谷光瑩の次男として生まれました。幼少期から病弱で、12歳の頃には病のため片足が不自由になりました。1900年まで南条文雄、村上専精、井上円了らに師事し、仏教や哲学を深く学びました。また、幸野楳嶺や竹内栖鳳に日本画を、正岡子規に俳句を学び、その才能を開花させました。

文化人としての才能

俳句の世界では、正岡子規の影響を受け『ホトトギス』に投稿。河東碧梧桐や高浜虚子らと交流を深めましたが、後に独自の境地を開き、生涯に約2万句もの俳句を残しました。「句仏上人」と称され、俳句を通して仏の教えを讃えるという独自のスタイルを確立しました。その文化的才能は、日本俳壇に新たな風を吹き込みました。

教育への貢献

1901年、札幌に仏教系の女学校がないことを知った光演は、学校設立を志しますが、資金難により頓挫。しかし、1906年には札幌初の仏教系女学校である北海女学校を開校させ、女子教育にも貢献しました。

東本願寺の管長として

先代の負債問題と病気による引退を受け、35歳で東本願寺の法主を継承した光演。財政再建に尽力しましたが、鉱山事業の失敗などにより、自己破産を申請。1925年に管長を辞任し、長男にその地位を譲りました。

句仏事件

光演が法主を継承した当時、東本願寺は巨額の負債を抱えていました。光演は、その再建のために様々な事業に挑戦しましたが、ことごとく失敗。結果、債権者からの返済要求に迫られ、文部省の指導により管長職を辞任。さらに僧籍も剥奪されるという事態に陥りました。この一連の出来事は「句仏事件」として知られています。その後、光演を支持する運動も起こりましたが、最終的に1925年に大谷家の相続財産が破産宣告を受けました。光演の僧籍は後に回復したものの、その波乱の生涯は多くの人々に影響を与えました。

年表

1875年（明治8年）：東本願寺第二十二代法主・現如の次男として誕生。
1885年（明治18年）：得度。
1900年（明治33年）：仏骨奉迎正使としてタイを訪問。
1901年（明治34年）：真宗大谷派副管長に就任。
1906年（明治39年）：札幌に北海女学校を開校。
1908年（明治41年）：第二十三代法主を継承し、真宗大谷派管長となる。
1911年（明治44年）：宗祖親鸞聖人六百五十回御遠忌法要を厳修。
1925年（大正14年）：東本願寺の財政を混乱させ、引責・退隠。長男に法主を譲る。
1943年（昭和18年）：68歳で死去。

栄典

1912年（明治45年）：従四位に叙せられる。

その他の関連人物

光演は、清沢満之、近角常観、佐々木月樵、暁烏敏といった人物とも交流がありました。また、近衛文麿とも姻戚関係があり、当時の政界にも影響力を持っていました。

著書

光演は、俳句集や仏教書など、多くの著書を残しています。

『句仏句集』
『俳諧歳時記 新年』
『我は我』
『夢の跡』
『この大災に遇うて』
『法悦の一境』
『句仏上人俳句頂戴鈔』
『自然のままに』

大谷光演は、多才な文化人として、また東本願寺の管長として、その生涯を通じて多くの足跡を残しました。彼の生き方は、今もなお多くの人々に語り継がれています。

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