大鷲平

大鷲平（おおわし ひとし）は、1946年1月12日に長野県佐久市で生まれた元大相撲力士です。本名を伊藤平（いとう ひとし）といい、若松部屋に所属していました。最高位は西前頭3枚目で、その体格は身長190cm、体重115kgと恵まれていました。得意な技は左四つからの上手投げや吊りなどで、力強い相撲が持ち味でした。

生い立ちと入門
幼少期は平均的な体格でしたが、小学生の頃から急激に身長が伸び始めました。佐久市立東中学校では野球部に所属し、投手として活躍。豪速球を武器にする一方で、制球に課題を残していました。中学校卒業後、同じ佐久市出身の西岩親方（元若嵐）から熱心な勧誘を受け、相撲への興味も持っていたことから、あっさりと角界入りを決意。上京後、西岩親方が身を寄せていた若松部屋に入門しました。

力士としての道のり
1962年9月場所で16歳で初土俵を踏み、翌11月場所には本名の「伊藤」で序ノ口に付きました。その後、幕下時代の1964年11月場所から「大鷲」に改名しています。1968年7月には、東幕下15枚目で7戦全勝の好成績を収め、幕下優勝を果たしました。この活躍が認められ、翌9月場所には22歳で新十両へ昇進しました。

しかし、十両の地位を4場所務めた後は再び幕下へ降下。その後、2年2ヶ月にも及ぶ長い幕下生活を送ることになりました。この停滞の原因は、新十両昇進前に患った腰痛でした。しかし、十両に復帰した後に九州在住の整体師の施術を受けたことで腰の痛みは和らぎました。1971年9月場所で十両に返り咲いてからは、幕下に落ちることなく、1972年11月場所には26歳で新入幕を果たしました。

入幕後は、その長身を生かした上手からの攻めを得意とし、幕内中位から下位で活躍しました。しかし、立合いが拙く、押し相撲に弱いという弱点も抱えていたため、幕内上位では苦戦を強いられました。横綱・大関陣との対戦も2度経験しましたが、いずれも大きく負け越しています。1974年11月場所には、小結魁傑から勝利を収めていますが、数少ない印象的な勝ち星の一つです。

1978年1月場所では、東十両11枚目で2勝13敗と惨敗し、幕下陥落が確定。これを機に32歳で引退しました。1962年11月場所で序ノ口に付いてから引退まで、約15年間、一度も休場することなく土俵に上がり続け、988回連続出場という記録を打ち立てました。また、大鷲の引退から御嶽海久司が関取に昇進するまでの37年間、長野県出身の関取は不在でした。

引退後
引退後は年寄・中村を襲名し、後に山響へと名跡を変更しましたが、1980年9月場所限りで相撲界を去りました。その後は、故郷の佐久市で相撲料理店を経営しています。子供の頃から鶏を捌くことが得意だったため、現役時代には部屋に生きた鶏の差し入れがあると、ちゃんこ番ではないにも関わらず調理を手伝ったというエピソードも残っています。

お酒は全く飲めず、奈良漬けでも酔ってしまうほどだったそうです。また、コーヒー好きとしても知られていました。息子には、自身と同じく若松部屋に所属した元力士で、現在はプロレスラーとして活躍している大鷲透（朝鷲）がいます。

主な戦績
通算成績：488勝500敗 勝率.494
幕内成績：114勝156敗 勝率.422
現役在位：92場所
幕内在位：18場所
連続出場：988回（序ノ口以来無休、1962年11月場所-1978年1月場所）
幕下優勝：1回（1968年7月場所）

四股名の変遷
伊藤（いとう、1962年11月場所-1964年9月場所）
大鷲（おおわし、1964年11月場所-1978年1月場所）

年寄名跡の変遷
中村（なかむら、1978年1月-1979年9月）
山響（やまひびき、1979年9月-1980年9月）

参考文献
* 『戦後新入幕力士物語 第3巻』（著者：佐竹義惇、発行元：ベースボール・マガジン社、1991年、p567-p573）

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