大龍寺 (神戸市)

大龍寺：歴史と自然が織りなす神戸の霊山

大龍寺は、兵庫県神戸市中央区、再度山という緑豊かな山中に佇む由緒ある寺院です。東寺真言宗の別格本山として、古くから多くの人々に信仰を集め、特に「中風除けの寺」として広く知られています。

伝説と歴史の重なり

寺伝によれば、大龍寺の創建は奈良時代にまで遡ります。和気清麻呂が称徳天皇の勅命により寺院建立に適した地を探していた際、この地で刺客の襲撃を受けますが、龍の加護によって救われたという伝説が残されています。この奇跡をきっかけに、神護景雲2年（768年）、行基菩薩作と伝わる如意輪観音像を祀る寺院が建立され、「摩尼山大龍寺」と名付けられたと伝えられています。

その後、空海が唐への留学前後に参詣したという記録も残っており、このことから山号は「再度山」と呼ばれるようになったと言われています。境内には、空海作と伝わる「亀の岩」や、空海が修行したとされる場所の地名「修法ヶ原」などが残り、空海の深い関わりを示しています。

南北朝時代には戦火に見舞われ衰退しましたが、観応年間（1350年～1352年）に善妙上人によって中興され、堂宇が再建されました。さらに、天授元年（1375年）には後円融天皇の中風の平癒を祈願したことが記録されており、古くから人々の信仰を集めてきた歴史が伺えます。現在の伽藍は江戸時代初期以降に再興されたものです。

見どころ満載の境内

朱塗りの山門は、再度山のランドマークとして、多くの登山客の目を楽しませています。境内には、本堂である大師堂をはじめ、毘沙門堂、三重石塔、鐘楼堂、護摩堂など、様々な建物が点在しています。また、四国八十八箇所石仏群や西国三十三所石仏群など、多くの石仏が安置されているのも特徴です。奥の院には、空海作と伝わる「亀の岩」や、市指定史跡である「梵字岩」があり、歴史と神秘を感じさせる空間が広がっています。霊明殿には、庫裡、納経所、納骨堂などが併設されています。

さらに、仁王門、稲荷社など、見どころが豊富で、境内を散策するだけでも、歴史と自然の息吹を感じることができます。

貴重な文化財

大龍寺には、数多くの文化財が保存されています。特に、奈良時代の木造菩薩立像（伝如意輪観音像）は重要文化財に指定されており、秘仏として大切に保管されています。通常、如意輪観音像は坐像であることが多いですが、この像は珍しい立像である点も注目に値します。その他にも、再度山大龍寺磨崖梵字岩が神戸市指定史跡、大龍寺寺叢および周辺のスダジイ群落が神戸市指定天然記念物に指定されるなど、自然と歴史が一体となった貴重な場所となっています。

霊場としての役割

大龍寺は、近畿三十六不動尊霊場、西国愛染十七霊場、摂津国八十八箇所、摂津国三十三箇所、神戸十三仏霊場、ぼけ封じ近畿十楽観音霊場など、多くの霊場にも属しており、信仰の拠点として重要な役割を担っています。

アクセスと周辺情報

大龍寺へのアクセスは、JR神戸線三ノ宮駅からバスを利用するのが便利です。森林植物園行または再度山行のバスで約30分、大龍寺山門前で下車し、徒歩10分です（冬季はバスが運休となる場合があります）。また、ハイキングコースを利用してアクセスすることも可能です。周辺には、再度山公園、神戸市立外国人墓地、神戸市立森林植物園、ヴィーナスブリッジなど、観光スポットも点在しています。

大龍寺は、歴史と自然、そして信仰が融合した、神戸を代表する魅力的な寺院です。訪れる人々に、静寂と安らぎ、そして歴史へのロマンを与えてくれるでしょう。

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