天草久種

天草久種

天草久種（あまくさ ひさたね）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将であり、キリシタン（キリスト教徒）でもありました。肥後国（現在の熊本県）の河内浦城を拠点とする城主でした。

生涯

天草氏は、肥後天草諸島の国人衆である天草五人衆の一つの氏族であり、久種はその15代目当主にあたります。

元亀2年（1571年）に妻と共にキリスト教の洗礼を受けました。妻の弟である栖本親高（すもとちかたか）は、姉である久種の妻の受洗に影響を受け、天正17年（1589年）に洗礼を受けたとされています。

天正12年（1584年）には、九州で勢力を拡大していた島津義久の招待を受け、薩摩（現在の鹿児島県）に赴きました。しかし、天正15年（1587年）には、天草五人衆と共に豊臣秀吉の九州平定の際に臣従したため、本領を安堵（領地を保証）されました。一方で、同年に秀吉が出したバテレン追放令（キリスト教宣教師の国外追放令）には、有馬晴信ら他のキリシタン大名と同じように背き、その後も宣教師たちを領内に受け入れ続けました。

天正17年（1589年）には、小西行長が宇土城で行った城普請（城の修築工事）の要求を、志岐鎮経（しきしずつね）や大矢野種基（おおやのたねもと）、上津浦種直（こうつうらたねなお）、栖本親高ら天草五人衆と共に拒否し、反乱を起こしました（天草国人一揆、別名「天正の天草合戦」）。しかし、小西行長や援軍に来た加藤清正によって鎮圧され、敗北しました。その後、本領は安堵されたものの、小西行長に臣従し、その与力（指揮下に入る）として文禄・慶長の役（朝鮮出兵）にも従軍しました。

天草国人一揆の後、小西行長から本渡（現在の熊本県天草市）の代官に命じられ、天正19年（1591年）には修練院やコレジオ（中等教育機関）、印刷機などを領地内に移しました。以後、「天草版」と呼ばれるイエズス会発行の印刷本が多数出版されるなど、キリシタン文化が繁栄しました。

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いにも小西行長に従軍しましたが、西軍が敗走したため、一時的に三原城の小早川秀秋の許に身を寄せました。その後、所領を失ったため、備前国（現在の岡山県）の岡山藩主となった小早川氏に仕えましたが、しばらくして死去したと伝えられています。

天草氏の本家は、小早川氏の改易（領地没収）に伴い没落しましたが、久種の甥（または弟とも）である新助が肥後細川氏に仕えるなどして、家系は存続しています。

人物

久種はキリシタンとして信仰を貫き、領内におけるキリスト教文化の発展に尽力しました。また、戦国時代の激動の中で、自身の領地と家を守るために、様々な勢力との関係を築き、時には戦い、時には臣従するという複雑な選択を迫られました。

参考文献

結城了悟『キリシタンになった大名』（聖母の騎士社、2005年）
鶴田文史編著『西海のキリシタン文化綜覧』（天草文化出版社、1983年）
本渡市史編纂委員会『本渡市史』（本渡市、1991年）
『天草郡資料』天草家乗誌第４号知行目録類、737ページ。

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