天野政景

天野政景：鎌倉時代の御家人、長門国守護

天野政景（あまの まさかげ）は、鎌倉時代前期に活躍した御家人であり、長門国守護、和泉守を務めました。父は天野遠景、母は狩野茂光の娘という家系に生まれます。

生涯と功績

政景は、父・遠景とともに源氏方として石橋山の戦いに参加したことが『吾妻鏡』に記されています。その後も父と行動を共にしていたと考えられ、元久2年（1205年）の牧氏事件では、北条政子の意向を受け、長沼宗政、結城朝光、三浦義村らと共に将軍・源実朝を北条時政の屋敷から義時の屋敷へ移送する役割を果たしました。

承久元年（1219年）に源実朝が鶴岡八幡宮で暗殺された際には、供奉者として政景の名が見られます。また、三寅が鎌倉へ下向する際には、随兵としてその名が記されています。

承久の乱においては、東寺に籠る三浦胤義を攻撃し、続いて嵯峨で山田重忠を攻め滅ぼすという武功を挙げました。しかしその一方で、政景の子・時景は後鳥羽上皇方につき、処刑されています。承久の乱での戦功により、貞応元年（1223年）には長門国守護に任じられ、遠江国山香荘、武蔵国船木田荘由比郷、安芸国志芳荘など広大な所領を与えられました。

政景の死後、息子たちは所領争いを繰り広げましたが、その際に問題となった所領の多くは政景の時代に由来するものでした。このことから、後世の天野氏の所領の多くは、天野氏の祖である遠景ではなく、政景が恩賞として得た土地であったと考えられています。

寛喜2年（1230年）2月8日には、和泉守に任じられています。『吾妻鏡』における最後の登場は延応元年（1239年）5月5日の条で、仁治3年（1242年）以降は息子・義景が長門国守護として活動していることから、延応元年からそう遠くない時期に死去したと推測されています。没後の寛正3年（1245年）11月2日、長男の光景が肥後守に任じられましたが、その後惣領として登場するのは次男の景氏であり、光景が早世したため景氏が養子としてその地位を継いだと考えられています。

このように天野政景は、鎌倉時代前期における天野氏の勢力拡大に大きく貢献した人物であり、その武勇と功績は後世にまで語り継がれています。

参考文献

菊池紳一 著「鎌倉時代の天野氏について」、鎌倉遺文研究会編 編『鎌倉時代の社会と文化』東京堂出版〈鎌倉遺文研究 ; 2〉、1999年4月。ISBN 978-4-490-20375-2。
防長新聞社山口支社編 編『近世防長諸家系図綜覧』三坂圭治監修、防長新聞社、1966年3月。
復刻版 田村哲夫編修 編「一門右田毛利家」『近世防長諸家系図綜覧』三坂圭治監修（復刻版）、マツノ書店、1980年11月。

関連項目

天野氏

もう一度検索