太上皇

太上皇（たいじょうこう）とは

太上皇とは、退位した存命の皇帝に対して贈られる尊号です。上皇、または太上皇帝とも呼ばれます。

概要

「太上」は「最高の」という意味を持ちます。中国においては、同時期に存在する太上皇は原則として一人のみです。太上皇が存命中に皇帝が譲位し新たな太上皇が誕生した場合、元の太上皇には無上皇の尊号が奉られることがありました。

人民の頂点である皇帝に対し、その父も礼を尽くさなければならないという儒教的な矛盾を解消するために作られた称号であるという側面もあります。日本では、位を退いた天皇に対して太上天皇の尊号が奉られます。

欧米語では「引退した皇帝」（Retired Emperor）などと訳されますが、退位によって自動的に太上皇となるわけではありません。廃位されて王に降格させられる例も存在します。

日本における太上皇

2019年に日本の天皇（明仁）が退位し、近現代において初めて上皇となるにあたり、日本政府は正式な英文表記を「His Majesty the Emperor Emeritus」と決定しました。「retired」ではなく「emeritus」を使用することで、退位後の名誉職としての地位を国内外に明確に示す形となりました。

中国における太上皇

中国では、帝位を退いて太上皇となった例が数多く存在します。代表的な例として、西晋の恵帝、北斉の武成帝、唐の高祖・睿宗・玄宗、北宋の徽宗、南宋の高宗・孝宗・光宗、明の英宗、清の乾隆帝などが挙げられます。

これらの太上皇のうち、南宋の高宗・孝宗と清の乾隆帝は、太上皇となってからも実権を保持し続けました。しかし、その他の太上皇は退位とともに実権を皇帝に譲っています。

また、帝位には即かなかったものの、没後または存命中に子が皇帝となり王朝を開いたために太上皇の称号を贈られた例として、秦の始[[皇帝]]の父である荘襄王、漢の高祖の父である劉太公がいます。

無上皇は、北斉の滅亡直前の混乱の中で後主に奉られた一例のみです。その他、北周の宣帝が譲位後に自ら天元皇帝と称した例があります。

韓国における太上皇

李氏朝鮮の君主号は国王であり、退位した国王には太上王の尊号が贈られる例がありました。

1897年10月12日、李氏朝鮮第26代国王の高宗は国号を大韓帝国とし、王号を改めて皇帝号を称しました。

高宗は、近隣諸国の内政に対する介入がある中で親露政策を採り、日本の干渉の排除を志向しました。その象徴的な出来事がハーグ密使事件であり、朝鮮に対する日本の支配を排除するため、その不条理を国際社会に訴えましたが、これは頓挫し、日本との関係をより悪化させました。

そのため、李完用など親日派勢力により皇帝の退位が画策され、7月20日、皇太子（純宗）への譲位に追い込まれ、以後は「太皇帝」とされました。

ベトナムにおける太上皇

ベトナムにおける太上皇の称号は、中国や韓国とは異なり、国内に限り君主号としての意味を持っていました。

歴代王朝は代々中国皇帝に朝貢をしていましたが、一方で皇帝がその諱（本名）を他国に知られてその臣下扱いされることを潔しとしませんでした。そこで、皇帝が早い段階で後継者に帝位を譲って太上皇となり、王室内の最高意思決定と対外（中国）交渉を行い、皇帝は内政一般を扱うという慣習が成立しました。

陳朝の時代には、建国時に皇帝（太宗）即位から程なく父親が太上皇（陳承、後に太祖）に立てられています（『大越史記全書』建中元年12月条・同2年10月条）。このため、中国への朝貢は太上皇が「国王」を名乗って行っており、中国正史とベトナムの正史が伝えるベトナム君主の在位には1代ずつのずれが生じているといわれています。

関連項目

太上王
太上天王
太上天皇
太上法皇
准太上[[天皇]]
大院君
太上皇后
皇太后
* 太[[皇太后]]

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