太田屋新田

太田屋新田について

太田屋新田（おおたやしんでん）は、江戸時代に開墾された新田であり、現在の神奈川県横浜市中区関内地区の一部を構成しています。この地域は、かつて入江と砂州が入り組んだ地形でしたが、埋め立てによって新たな土地が生まれました。その歴史は、横浜の発展と密接に結びついています。

歴史

17世紀中期まで、現在の横浜市中心部は大岡川下流の入江が深く入り込み、元町付近から北へ伸びる洲干島（しゅうかんじま）という砂州が存在していました。1656年（明暦2年）からは、入江の奥部で江戸の材木商、吉田勘兵衛によって吉田新田の開墾が始まりました。

その後、1850年（嘉永3年）から1856年（安政3年）にかけて、三河国碧海郡川島村出身の太田屋左兵衛が開発者となり、叔父の源左衛門が差配して、洲干島の入江側に沿った沼地の埋め立てが行われました。これが太田屋新田の始まりです。

横浜沿革誌によると、太田屋新田には10戸の家と蓮光院という寺院が設けられました。しかし、その実態は「新田」という名前とは異なり、堤防や宅地を除いた大部分が海水によって干満し、人々は鯔（ボラ）や鰻を漁獲したり、沼に生える蘆を刈り取って生活していました。

1859年に横浜港が開港すると、太田屋新田は横浜・戸部・野毛の三ケ村とともに神奈川奉行の支配下に入り、横浜町を形成しました。太田屋新田はさらに埋め立てが進められ、外国人居留地の拡大が図られました。また、この地には遊郭（港崎遊郭）も開設され、吉田新田との間には吉田橋（後に太田橋とも呼ばれる）が架けられました。この橋には関所が設けられ、居留地のある側が「関内」と呼ばれるようになりました。

しかし、1866年11月26日に近隣の豚肉料理店から出火した火災（豚屋火事）により、港崎遊郭は焼失してしまいます。その後、跡地は1876年に横浜公園となり、1929年には横浜公園平和野球場、そして1978年には現在の横浜スタジアムが建設されました。

現在

現在の関内地区において、海岸側から弁天通付近まではかつての洲干島にあたり、弁天通から太田町、相生町、住吉町、常盤町、尾上町、真砂町、港町にかけての細長い地域と横浜公園、山下町の一部（横浜中華街の西側）が、太田屋新田の範囲に相当します。

太田町の地名は、太田屋新田の開拓者である太田屋左兵衛に由来しています。太田屋新田の各町の通りは、海岸線に沿って南東から北西方向に走っています。一方、中華街周辺は住民有志によって「横浜新田」として開拓されたため、通りが東西南北に近い向きになっており、太田屋新田や洲干島の道路とは直交しない構造となっています。

まとめ

太田屋新田は、埋め立てによって生まれた土地であり、その歴史は横浜の発展と深く関わっています。新田開発から外国人居留地、遊郭、そして現代の公園や街並みへと、その姿を変えながら現在に至っています。

この地域は、横浜の歴史と文化を物語る重要な場所であり、その変遷をたどることで、横浜の発展の軌跡をより深く理解することができます。

参考文献

『角川日本地名大辞典 14 神奈川県』角川書店、1984年6月8日、185頁。
横浜市市民局総務部住居表示課『横浜の町名』1996年12月、63頁。

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