吉田橋

吉田橋：歴史と変遷を辿る横浜の象徴

吉田橋は、神奈川県横浜市中区の馬車道と伊勢佐木町の間に位置し、首都高速道路の掘割に架かる道路橋です。その歴史は古く、横浜の発展と共に姿を変えてきました。

歴史

初代：仮橋

1859年（安政6年）、横浜港開港に伴い、東海道と横浜港を結ぶ横浜道に仮橋が架けられました。この橋は、外国人居留地と外部を隔てる関門番所としても機能し、橋の内側は現在でも「関内」と呼ばれています。

2代目：木造橋

1862年（文久2年）、仮橋から木造の本橋に架け替えられましたが、構造が脆弱であったため、馬車の通行に支障をきたし、居留地の外国人から苦情が寄せられました。

3代目：鉄製トラス橋

1869年（明治2年）、お雇い外国人の灯台技師リチャード・ブラントンにより、日本初の無橋脚鉄製トラス橋に架け替えられました。この橋はイギリスで製造された鉄材を使用し、全長約23.6m、幅約9.1m、トラスの高さ約1.8mでした。完成から1874年まで通行料が徴収され、「かねの橋」とも呼ばれました。当時の絵師たちにも評判で、錦絵にも描かれています。

橋の嵩上げ

吉田橋の周辺が埋め立てられたことにより、橋が道路より低くなるという問題が発生しました。1877年には、潮の干満を利用して橋を約1.5m嵩上げするという大工事が行われました。

4代目：鉄筋コンクリートアーチ橋

1911年（明治44年）、鉄筋コンクリート製の3連アーチ橋に架け替えられました。全長約36.4m、幅約21.8mで、ヨーロッパ様式のモダンなデザインが特徴でした。橋上には横浜市電の軌道が敷設されましたが、関東大震災後に軌道は下流側の羽衣橋に移設されました。

5代目：ゲルバー式混合橋

第二次世界大戦後、地盤沈下により橋のアーチに変形が生じたため、1958年にゲルバー式混合橋に架け替えられました。全長38.5m、全幅22mでした。

現在の橋：2層構造の橋

現在の橋は1978年に完成した5代目で、2層構造となっています。上部は2車線の車道と両側の歩道で構成され、車道は馬車道方面から伊勢佐木町方面へ一方通行です。橋の下層部はマリナード地下街の広場として利用されています。

近隣の構造物

吉田橋の近隣には、首都高速横羽線の掘割区間があり、大岡川、桜木町トンネル、羽衣橋、花園トンネル、花園橋トンネルなどが連続しています。

橋の名称

吉田橋の名称は、吉田新田と開拓に尽力した吉田勘兵衛に由来します。かつては「太田橋」と呼ばれた時期もありましたが、現在は京急本線黄金町駅付近の大岡川に架かる橋が「太田橋」という名称を使用しています。

橋の意匠

現在の吉田橋の欄干には、2代目の「かねの橋」をイメージした意匠が採用されています。これは、歴史を継承する意図が込められていると言えるでしょう。


吉田橋は、横浜の歴史と都市の変遷を象徴する重要な存在です。その構造、周辺環境とともに、横浜の発展を今に伝える貴重な遺産と言えるでしょう。

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